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2017年9月18日 (月)

恵峰師の長生きの秘訣

 下記は、2017年9月14日、恵峰先生宅で書の撮影の合間のお茶席での雑談で仕入れたお話です。

 恵峰師は、月に一度、国立病院で検査を受けるが、現在、師は高血圧でもなく、極めて健康である。耳は昔の事故のため補聴器が必要であるが、頭脳も明晰、目もいい。歯は入れ歯であるが、超健康体である。うらやましい限りである。それにはワケがある。

 

恵峰師の話

 人生で大事なことは、頭とお腹に詰めるものをコントロールすること。それをしないから早く死ぬ。頭に詰めるものを詰めないから、つまらない人間になる。腹に多く詰めるから、腐って病気になる。そのバランスが大事である。

 固定するものは滅す。開は仁なり(開は人の道なり)。(老子)

 

 頭に入れたら、人に教えて頭を空っぽにすること。そうすると、また頭に詰めることができる。出さないから、入れることができない。出さないからノイローゼになる。

 金を沢山、懐に詰めるから病気になる。金を持ったまま死んでいく。金を流さないから病気になる。大体、金が出来ると、みんな国立病院に入院するようだ。私は金を持っていないので、身軽に動くことができ、手で軽々と書を書ける。

 今まで中国に私費で240回行って、一回20万円の旅費としても約5千万円を使った。今、お金は残っていないが、中国に行って民間で大事にしているものを買ってきた。国宝級のモノではなく、庶民が大事にしている文化財を買ってきた。それで家にお金は残っていないが、中国のモノが日中文化資料館に沢山残った。今、そのような作品を買いたくても中国にはモノがない。全て世界に散逸してしまった。中国人が見ても、喉から手を出しても欲しいものが日中文化資料館に沢山あり、中国人が驚嘆している。あくまで中国と国際交流として手に入ったものばかりである。中国人が、「恵峰先生に是非買って欲しい」と言って持ってきたものばかりである。中には、当時数十万のものが、現在は数百万円出しても買えないものも多い。全て人と人とのご縁の賜物である。恵峰師が人と人との間の人様のご縁を大事にしてきた成果である。

 60歳の時、家屋敷を担保にして生命保険をかけて、銀行から1億円を借りて、社会奉仕活動として日中文化資料館を建てた。その借金を24年かけて完済した。84歳の時である。その時はさすがに嬉しく、長男と手を取り合って喜んだ。

 

恵峰師の日常生活

 恵峰師は91歳の現在も、毎日夜遅くまで仕事として書を揮毫しまくっている。中国に行くと、購入した書の材料(軸、冊子、色紙)等を、同行した仲間に一人30キロ分を持たせて、帰国する。それに何を書くかを考えるのが楽しいという。それも後世に残すための書を書くことが多い。儲けるために書くわけではない。100mの巻物軸は、売るために書いたのではない。あくまで後世のお手本として残すために2年を掛けて揮毫された。「源氏物語」千首の色紙を書いた時も、源氏物語発刊千年遠忌があり、思いついて書いただけで、誰からも頼まれたわけではない。「奥の細道全集」も、松尾芭蕉300年遠忌が1995年に巡ってきて、思いついて書いたまでである。それも書いた色紙が、全て違うデザインの色紙である。これはバカにしかできない。おりこうさんなら、絶対にやらないことである。東大を出て合理的な人間には、絶対にできないこと。人間は損得勘定で、理性的にやる限り、人生で出来ることは知れたものと思う。私は、それが仏さまにして師を長生きさせている理由だと思う。

 毎日の仕事の合間に、350坪の敷地の庭を毎日、朝晩30分間づつ、掃除、草取りをされる。だから日中文化資料館の敷地には雑草一本生えていない。定期的に体を動かすのが健康に良いはずである。庭の松や榎の手入れも自分でされる。「私は庭師だ」と自称されるほど。

 食事は小食でゆっくりと咀嚼し、感謝して食べる。いつも私が同席して食べると私が早く食べてしまうので、いつも早すぎると叱られる。お酒は紹興酒を盃一杯に3倍のお湯で薄めて飲まれる。中国に行くと、何も言わなくても相手がそうやってお酒を出してくるとか。

 恵峰師は生きているのではない、ご先祖から生かされているのだ、が口癖である。先生の長生きの秘訣は、書写行であるようだ。書写行が最大のご先祖供養である。今までに1万五千字以上の写経をされた。師でも般若心経を写経するのに、2時間はかかる。師は表装された軸に直接揮毫される。揮毫してから表装するのではない。神業である。

 

2017-09-18

久志能幾研究所 小田泰仙  HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite

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