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2017年8月22日 (火)

自然との対話を大切に

 太志塾(大島修冶塾長 2014年10月5日)で、演題「自分を知る事の大切さ」との馬場恵峰先生のお話をまとめた。

 初日(10月4日)の太志塾の講義が終ったあと、恵峰先生が身内の仲間に意味深長に、「明日の講義は年功のある話を聞かせてあげる」と言われた。

 「理屈は通る話だが、ガンガン、バリバリと熱い話を一方的に頭に押し込んでも、相手には受け入れてもらえない。体にビタミンCがいいからと大量に摂っても一定以上は排出されるだけ。それが自然の体の摂理である。頭に入れる情報も同じで、まずその器を大きくしないと、頭に入っていかない。単に消化不良を起こすだけである。講演会も同じで、もっと自然体で優しく話さないと頭に入らないし、ためにならない」が恵峰先生の言いたいことである。自然を愛でて余裕ある生き方をしないと、長生きも良き経営も出来ない。

 人から尊敬される人間になるためには、まず自分が自分を育てないといけない。自分が自分を大事にしないと長生きはできない。恵峰先生が88歳の道を歩いているには、歩くことができるようにした心がけのワケがある。がむしゃらに高度成長で驀進しても、どこかで躓いてしまう。そこから先生は講義の冒頭で「すすき」を持って話すことを思いつかれたようだ。

 

「若いね」

 先生に言わせると、初日の講話を担当された百戦錬磨の講師達は「若いね」であった。88歳の年長者から見た年功の差は、如何ともしがたい大きな差がある。88歳にならないと見えない世界がある。先生の講義を聞いて、他の若い(といっても60歳前後)講師の話との大きな差を感じ、年功と言う財産を羨ましく感じた。もっともそういう年功を感じさせる人生の達人(老人)は、日本はおろか中国でも少ないのが現実である。そういう恵峰先生とご縁が出来たのもありがたいこと。日本では、老人の「老」はマイナスのイメージがあるが、「老」とは中国での本来の意味はプラスのイメージの言葉である。

 自分を深く知らない限り、親から頂いた命は全うできない。生きているのではない、活かされているのだ。それに感謝して人生を全うしたいもの。

 前日の深夜の色紙書きを終え、朝を覚ますと窓の外にすすきが揺れていた。

   太志塾またおいでよとすすき揺れ  恵峰

 その時にならないと頭が回らないのでは、いくら理屈をこね回しても儲からない。ゆかしく楽しく生きること。自然と対話する人間にならないと長生きができない。口先だけで利口なことを言っても人は付いてこない。己の足元を見ていく生きかたが大切である。

 

付加価値を生む環境

 今回(2014年10月)、日本人3名のノーベル賞を受賞したことで中国、韓国は知識層を中心に打ちひしがれているはずです。たとえどんなに経済成長を続け、強大な軍事力を誇っても、その国が世界中の尊敬を集めることはありません。重要なのは、どれだけ人類史上に残す知的財産や文化的財産、すなわち普遍的価値を生み出したかに尽きます。また、それによってのみ、国民に真の自信と誇りが備わるのです。

 ノーベル賞の受賞者が輩出する国には2つの条件があります。

 第一に、幼年期から成長していく過程で、身近に美しいものがなければなりません。豊かな自然や優れた芸術、文学に触れて美的感受性を養うことが必要です。数学や物理学などのサイエンにとって、美的感受性は知能指数や偏差値よりも大事です。

 日本には緑の山々や、繊細な四季の移り変わりがあります。それ自体が世界的にも大変珍しい。加えて素晴らしい文学、絵画、彫刻も多数存在し、美に触れる機会にも恵まれています。

 第二に、精神性を尊ぶ風土も不可欠です。要するに、金儲けや実用性だけを追及せず、役に立たないと思えても精神性の高いものには敬意を払う土壌が肝要と言えます。『万葉集』にしても、日本では1400年も前から一般庶民が腹の足しにもならない歌を詠んでいる。そこに価値を生み出すことが何よりも大切です。多くの科学分野では、100年後に芽が出るか、100年後に実用化するかどうか分からないことも研究しています。それを“単なる無駄”と考えてしまったら人類に進歩はないんですね。

 中国や韓国にも有能な人材はたくさんいますが、残念ながら彼らの多くは金融関係や弁護士、医者といった“金になる”仕事に就いたり、海外へと流失していく。利益だけを優先すると“無駄な”科学に人材が向わなくなるわけです。

      数学者・藤原正彦氏(『週刊新潮』2014年10月23日号)

 

 これは経営にも当てはまる。単に金儲けだけのグローバル経済主義は、1%の人だけの幸せを追求するが、99%の人たちを不幸に陥れる邪悪な思想である。なんのために経営をするのか、自然をめでる余裕がない経営者に、良い経営も長生きも出来ないと恵峰先生はすすきを例に、塾生を諭している。

 

わかっているであろうか

 忘れてはならぬものは     恩義

 捨ててはならぬものは     義気人情

 与えなければならないのは   人情

 繰り返してはならないものは  過ち

 通してはならないものは    我意

 笑ってはいけないものは    人の失敗

 

 人から聞いた話も咀嚼をして自分のものにしてから、部下に話をしないと相手は聴いてくれない。自分のものにしてから、自分の我意を通していくこと。

 

「いのち」とは「胃脳血」

 胃  食材

 脳  考え

 血  全身を巡る

 

 先祖、親、師、友のご恩があって今の自分がある。夢夢「自分が」ではないと思うべし。馬鹿になることが大切。利巧ぶるからうまく行かない。馬鹿にならないと100mの巻物は書けない。馬鹿にならないと中国に230回も行けない。近所の暇人が言う「どげんか用があって中国に行くばってん?」 用があるから中国に行くのではない、用を作りに行くのだ。そこから新しいご縁が始まる。馬鹿になって己の道を精進しないと、年老いてから後悔する。人の馬鹿を笑っている者が、最期に笑われる本当の馬鹿になる。

 自分の人生を謳歌するのが仕事ではない。人として後に続く子孫のために仕事をするのだ。「ひと」とは「霊」が「止」まると書く。縁あって人間に生まれたのだ。豚に生まれなかった幸せを考えよう。

 

図1 講演される馬場恵峰先生   2014年10月5日

 

2017-08-22

久志能幾研究所 小田泰仙  HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite

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