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2017年7月10日 (月)

某歯科医院の経営診断

顧客不満足度100%

 ある歯科医院で歯垢取りの処置を受けた(2012年10月4日)。このとき腹立たしい扱いを受けた。顧客の商品に対する不満足は、商品そのもの質の高低ではなく、客として人間扱いされない場合の影響が極めて高い。

 歯垢を取る処置で4本目の歯にかかった時、向こう側の席にいた院長が「〇〇くーん、ちょっと来てくれ~」との声が聞こえ、その男性歯科医は今の処置をおっぽり出し、その院長のところへ飛んでいった。処置中の患者には一言の断りもなく、である。部下の状況を見ずに部下を呼んだ院長も、院内の処置中の患者のことは考えていなかった。その後、女性の歯科医が引き継いで歯垢を取る処置にかかったが、一言の挨拶も説明もなかったし、医師同士での何処まで終わったかの引継ぎの基本的な会話も聞こえなかった。不安になったが、患者の身では成されるがままである。慌てて引き継いだためか、女性の歯科医は男性の歯科医よりも技量が低いのか、いつもより数多くの痛い思いをさせられた。まるで工場のコンベア作業のようで、患者は養鶏所で金を産む鶏扱いだと感じた。黙って帰宅したが、今は思い出すたびに怒りがこみ上げてくる。

ボディータッチの意味

 この院長は親近感を出すつもりで、馴れ馴れしく患者の肩をたたくことが多い。その行為が、患者の心境を酷く害して不快感を与えている。この行為は、自分が偉く、相手より上位であると誇示する時のボディーランゲージである。常識的に目上の人にはボディータッチなどしない。患者と医師の関係は、上下関係かもしれないが、その前に長幼の序という社会の掟がある。はるかに年下の人間から、そんなボディータッチを受けると、侮辱されたような感情がわきあがってきて不愉快極まりない。

 社長がどんな偉いことを言っても、部下は正直で、上司の背中を見てまねをする。親が言っても子供は言う事を聞かないが、親のやっていることをまねる。そのせいか、この医院の若い歯科医もはるかに年長者の患者の肩を叩いて、親近感を出すジェスチャーをして患者の心象を害している。悪いことに院長も部下も、患者が心象を害していることに全く気づいていない。私は還暦を過ぎた歳で、今までで、医者はおろか上司からもボディータッチされた記憶はない。そのせいか、院長は丁寧な言葉遣いではあるが、私の耳には慇懃無礼な印象を与えた。本人は意識しなくても、いくら隠しても、深層心理学上では、言動に本心が表れる。

院長写真の悪印象

 この歯科医院案内書、新聞チラシに掲載された院長の写真も異様である。腕を組んで斜めに構えてこちらを見据えている姿と異様な口の開き方である。腕を組む姿勢のボディーランゲージの意味は、相手への「拒否」である。湾岸戦争の時(1990年)、フセイン大統領が、捕虜の英国少年に自国の「慈愛に満ちた」活動のPRのため、話をする姿を放映したが、少年はフセイン大統領に対して腕組をして、黙って拒否反応を示した。さすが大英帝国の末裔の少年だと全世界のマスコミが、ボディーランゲージの意味を解説して賞賛した。

 写真の斜めにこちらを見据えている視線も異様である。私も会社案内書、会社決算報告書での社長の写真等で千枚枚以上のトップの写真を見てきたが、こんな視線のトップの写真は見たことがない。顎を少し上げ、見下したような視線が哀しい。姿勢もふんぞりかえっているような印象を受ける。口の開き方も、どんなメッセージがあるかは不明であるが、少なくとも笑みの口の開き方ではない。口の両サイドが下がり、幾分下に反り返った口の形が、相手に不快感を与えている。普通の笑顔では口の両端が上がっている。その写真は、見る相手に「拒否」の姿勢でふんぞり返って、斜め上から視線である。患者に何を伝えたいのか、疑問を与える写真である。

 新聞のチラシにもこの写真が使われていたが、全体印象が異様である。さらに、その用紙がパチンコ店の広告より質の悪い紙で、極めて低俗な安っぽい印象を与えている。提供する紙の質も、大きなメッセージである。その前提として、歯科医院の広告を新聞チラシで行うこと自体、疑問を感じる。医療は特売するような商品ではない。そんなに儲けたいのか。

院長名刺の特異性

 院長の名刺も異様なデザインである。会社生活38年で5,000枚の名刺を交換して、大部分を保存している。現在、名刺のテクニカルライティング的な研究中で、名刺占いの本を出版する予定をしているが、こんな異様なデザインに出会ったのは初めてである。テクニカルライティングの専門家として、名刺と会社案内書を見れば、「会社と社長の人格が分かる」が私の主張である。なにせ社長の名刺はその会社の顔である。

 三河の某駅の近くに、患者の血を吸って儲けたと噂される赤レンガの病院がある。実際にそこで診察を受けて、金儲けとしか思えない過剰治療を体験した。悪い噂に納得し、すぐに別の病院に転院した。レンガ色の名刺を見て、それを思い出した。医師には医師のイメージがある。ラテン語のペルソナとは仮面のことで、社会では全員が仮面を被って人生劇場を演じている。そこからパーソナリティという言葉が生まれた。人はその仮面のもつ意味を信じて人間関係を築いている。医師の仮面のイメージカラーは白衣の白である。そのイメージに合っていない名刺デザインである。

 

図1 他人を動かす

 

2017-07-10

久志能幾研究所 小田泰仙  HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite

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