時間創出1001の磨墨智 688(金に糸目はつけず)
688.「金はいくらでも出すから治して欲しい症候群」に罹らない
嘱託で働いている70歳の人が、末期ガンを宣告され、「まさか、何で私が」と絶句した。それで医師に「金に糸目はつけないから治して欲しい」と懇願したが、医師は拒絶した。それで治せるならノーベル賞である。絶望した患者は「それでもお前は医師か。藪医者だ」と罵詈雑言を医師に浴びせて泣き崩れた。何所にでもあるドラマである。70歳といえば人生の酸いも甘いも味わいつくしたはずである。緊急事態に遭遇すると、それが破綻して今までの生き様が露見する。他山の石としたい事例である。
ガンは幸せな病気である
国民の5割がガンで死ぬ時代である。ガンが発症するまで長生きできるようになった証である。その幸せを忘れて、じたばたするのは、わがままである。ガンは死ぬまでにかなりの時間的余裕を与えてくれる。2011年3月11日、突然、東日本大震災の津波に流されながら、なす術もなく死を迎えた方に比べれば幸せである。死の前にやるべき後片付けの仕事は多い。それをできず亡くなられた方の無念がしのばれる。
世界一の企業価値に成長させたアップルの創業者ジョブズ氏のすい臓がん、日本の名医が治療を担当した昭和天皇の腺癌、どれをとってもお金でガンが治った例はない。それを知っていても、「金に糸目はつけないから治して欲しい」というのが人間の性である。生あるものは必ず死を迎える。それを意識して70年をどう生きたかが問われる。急に決まったわけではない。生まれたときから、死は必然である。それから逃れた人はいない。
死んでもいいから健康管理
人の時間価値は(残りの人生価値)÷(残り時間)で表される。残り時間が沢山あるうちに、健康に留意した時間を過ごせば、終末段階で悔いがない。人生の最期で焦っても、手遅れである。そうならないように、日ごろの健康管理と精進が時間節約となる。人生を過ごすのに必要な設備は、体と頭脳と魂の健康管理である。体の健康管理を怠っては、頭脳の明晰化も魂の浄化も始まらない。死んでもいいから健康であるべきだ。死は人間には司れないが、健康管理は自分の手で管理できる。この世は因果応報。原因のない事象はない。その人の生活が、ガンを患うような生活習慣を長年続けて来たに過ぎない。金に糸目をつけない気持ちがあるなら、なぜ、金に糸目をつけず健康管理に投資をしてこなかったのか。病気やガンに100%ならない保証はないが、その確率は減らせたはず。
仏さまが呆れる
酒は飲む、タバコは吸う、夜遊びはする、飽食はする、運動はしない、ストレスは溜める、医師は罵倒する、これで病気にならないのがおかしい。仏様もそこまでは面度を見られないよと仰せです。自分の生き様の間違いに1日早く気づけば、1日の儲けである。間違いに気づく前に、ガンが発見されたに過ぎない。ガンは身内の正常な細胞が細胞分裂で暴走を始めることで発症する。不規則な生活のツケが細胞に回され、弱い細胞が悲鳴を上げて、細胞分裂の暴走が始まる。身内の細胞をいじめた咎である。全ての原因は自分である。
エピソード 追悼の書
東日本大震災の被害に遭われた朋友の齋藤明彦社長(盛岡・㈱電創総合サービス)が、東北の皆さんに元気になってもらうため、書の師である馬場恵峰先生(当時84歳)宅を訪問して(2011年4月2日)、哀悼の書の揮毫を依頼された。そのとき、まだ亡くなられた方の精霊が三陸海岸宮古「浄土が浜」の海水に漂っているとして、その「浄土が浜」の海水を持参して、それを使っての書の依頼である。震災後のかたづけの多忙の時期で、家族や社員の方からは白い目で見られての長崎訪問である。当時、齋藤社長の会社も甚大な被害を受け、てんてこ舞いの状態であった。従業員の方に死亡者がいなかったのがせめてもの救いである。恵峰師は海水を使っての磨墨は、そのままではかなり書きにくいとのことで、水で薄めて書かれた。考えるまもなく津波に押し流された方の無念が偲ばれる。明日はわが身と思い、時間の有限性を認識しよう。縁があって私も、その当日に恵峰先生宅を訪問した。馬場恵峰書「奥の細道全集」の写真撮影のためである。
図1 追悼書 加古川山荘にて(2011年4月16日 撮影 小田)
図2 馬場恵峰師と齋藤明彦社長(右) 日中文化資料館付属図書館2階 2011年4月2日
2017-07-26
久志能幾研究所 HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite
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