時間創出1001の磨墨智 18(自由の女神)
18.自由の女神を見つめよう
導きの灯火が未来の時間を創る。ニューヨークの入り江に立つ自由の女神が、移民の人々を勇気づけて、未来の時間と希望を与え、今のアメリカの繁栄と時間を創った。
アメリカンドリーム 自由の女神からのメッセージ
フェリーから眺める自由の女神像と摩天楼の林立するウォール街の光景は、アメリカンドリームを人の心に喚起させる力を持っている。ニューヨークのベットタウンであるスタッテン島からウォール街への通勤フェリーは、この百年間に、数多くの人の夢と希望をマッハンタン島に運んできた。このフェリーから見る、海上に忽然と浮かび上がり近づいてくる女神像と摩天楼は、蜃気楼の中に浮んでくるように見え、ある種の感動をもたらす。はからずも米映画『WORKING GIRL』でメラニー・グリフィスの演じた、下積みから這い上がろうと必死の模索をするキャリアウーマン・テスの気持ちが実感として伝わってくる。この感情の高ぶりは、映画だけでは体感できなかった。この感動と気持ちの高ぶりは、日本おろか世界の他の都市や名所の訪問でも経験したことはなく、歳のせいか感動の薄くなった私にとって、初めての経験であった。日本の高層ビルを見ても、バス中からNYの摩天楼を見てもこんな気分にはならなかった。しかし、自由の女神が沖合から見守るウォール街の摩天楼の林立は、努力と才能しだいで自分がこれらのビルのひとつくらい持てる身分になれる雰囲気と、一旗上げようとする意欲を与えてくれから不思議である。
こういう夢と意識をいつまでも持ち続けサムエル・ウルマンの言う「青春」でありたいものだ。映画の『ゴッドファーザ パートⅡ』の冒頭でも、この自由の女神の姿はアメリカへの移民の眼を通したで形で登場するが、実際に自分の眼で見ないとその実感動は体験できない。これは映画では得られなかった感動である。きっと夢を抱いてアメリカの土を踏んだ移民達は、この自由の女神の姿にどれだけ、勇気づけられたことかと思う。これが現在のアメリカを、世界一の国にした原動力の一つだと感じた。私も一旗揚げようという気になった。NYは、他の都市にはない目に見えない、何かを霊感させる力を持っている。これはNYが米国の一都市ではなく、NYとしての別の国の雰囲気を持っているせいかも知れない。(1994-05-11記)
青春 サムエル・ウルマン
青春とは、人生のある期間ではなく、心の持ちかたのを言う。
青春とは、薔薇の頬、紅の唇、しなやかな肢体ではなく、強靱な意志、豊潤な創造力、炎える情熱をさす。
青春とは、人生の淵泉の清新さと、心の状態を言う。
青春とは、怯懦を退ける勇気、安易を振り捨てる冒険心を意味する。ときには、20歳の青春よりも60歳の人に青春がある。年を重ねただけでは人は老いない。理想・夢を失うときに初めて人は老いる。
歳月は皮膚にしわを増すが、情熱を失えば心もしぼむ。苦悩・恐怖・失望により気力は地に這い、精神は芥となる。
60歳であろうと16歳であろうと人の胸には、驚異に魅かれる心、おさな児のような未知への探究心、人生への興味の歓喜がある。君にも吾にも見えざる駅逓が心にある。人から神から、美・希望・喜悦・勇気・力の霊感を受けるかぎり君は若い。
霊感が絶え、精神が皮肉の雪に覆われ、悲歎の氷に閉される時、20歳であろうと人は老いる。頭を高く上げ、希望の波を捉えるかぎり、80歳であろう人は青春として生きる。
宇野収・作山宗久著 『青春』より (産業能率大学出版部刊)
Youth 『青春』 Samuel Ullman
Youth is not a time of life; it is a state of mind; it is not a matter of rosy cheeks, red lips and suppleknees; it is a matter of the will, a quality of the imagination, a vigor of the emotions; it is the freshness of the deep springs of life.
Youth means a temperamental predominance of courage over timidity of the appetites, for adventure over the love of ease. This often exists in a man of sixty more than a boy of twenty. Nobody grows old merely by a number of years. We grow old by desering our ideals.
Years may wrinkle the skin, but to give up enthusiasm wrinkles the soul. Worry, fear, self-distrust bows the heart and turns the spirit back to dust.
Whether sixty or sixteen, there is in every human being's heart the lure of wonder, the unfailing child-like appetite of what's next, and the joy of game of living. In the center of your heart and my heart there is a wireless station; so long as it receives messages of beauty, hope, cheer, courage and power from men and from the Infinite, so long are you young.
When the aerials are down, and your spirit is convered with snows of cynicism and the ice of pessimism, then you are grown old, even at twenty, but as long as your aerials are up, to catch the waves of optimism, there is hope you may die young at eighty.
この詩は夢を与えてくれる。私もこの詩を座右銘にしている。かのケンタッキーフライドチキンのおじさんが、あの事業を50歳の半ばから始めたことを思うと、肉体的年齢で青年や老人の区別などで頓着していられまい。私は死ぬまで青春として生きていきたい。マッカーサーはこの詩を東京のGHQ執務室に掲げていた。松下幸之助翁もこの詩をアレンジして、自分の座右銘にしていた。この詩を愛読した世の著名人は多い。かのマッカーサー司令官も解任されて帰国後、議会で「老兵は死なず。ただ消えさるのみ・・ 」と演説したが、この詩が頭にあればもっと違った表現をしたと思う。なんと元気のない表現であろうかと残念に思う。私は彼が軍人としての役目を終え、次の自分の青春として役目を模索していたと私は信じている。そうでなければ、この演説は、「青春」を座右銘にしてきた人の言葉ではない。
挑戦という自己投資
青春を続けるためには、自分への設備投資が不可欠であると思う。個人でも企業でも設備投資なくして発展はない。不況だからこそ、この投資が必要と考える。不況のとき、大多数の他社が投資できない時に設備投資した会社が、景気の回復時に勝利者になる。特に人への投資は成果が出るまで、最低10年の期間がかかる。移民たちが成し遂げた投資は、「己が新大陸へ渡るという挑戦」であった。1994年春、私にアメリカンドリームを見せてくれた国際貿易センタービル106階の「場」は、2001年9月11日、同時多発テロで消滅した。しかし自由の女神が掲げる燈火は消えなかった。
図1 フェリー上から見た自由の女神とウォール街ビル群
右手一番高いビルが国際貿易センタービル 1994年5月3日
図2 国際貿易センタービル106階からの展望 1994年5月5日
図3 国際貿易センタービル106階からの展望 1994年5月5日
図4 国際貿易センタービル106階からの展望 1994年5月5日
手前の昔の移民局と自由の女神の位置関係が良くわかる
2017-07-23
久志能幾研究所 小田泰仙 HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite
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