生きよう、今日も喜んで
これは、平澤興語録『生きよう今日も喜んで』(致知出版社 1995年1000円)の題名である。これは私が病気になった知人に、いつもお見舞いとして贈る図書である。
今年、私は癌を患い、手術後の療養中に、この書を久しぶりに読み直して、元気をもらった。病気とは、無理があって起こる体の故障である。その故障は軽くはなかったが、修復不能ではないのが、不幸中の幸いであった。病気に気付き、治療の機会に恵まれたのは、ありがたいことであった。
病気というのは、無理をせずに長生きをする一つの過程である、と平澤師は言う。癌を患い、つくづくとそれを実感した。病気にならないと、本当の健康の意味は理解できない。
本当にものを知るとは、賢くなることではなく、しみじみと自らの愚かさを知り、世の不思議を感じて、それに感謝をすることだと知った。格物致知の世界である。
本書を自宅に在庫
この書は、字が大きく、小冊子で、病気の人でもすぐ読めて、読んだら元気になれる言葉が一杯書かれている。私はいつも病気見舞い用に10冊単位で購入して、家に在庫している。約20年前から、そうしている。自分が人生で悩んだ時、この書が勇気を与えてくれる。この書は、心の常備薬である。
平澤興氏は、元京大総長で、本来ならノーベル賞を貰っても不思議でない業績を上げられた。
以下、その抜粋
ものを知る
本当にものを知るということは、普通に考えるように、いわゆる賢くなることではなく、むしろしみじみと自らの愚かさを知り、世の不思議を感じて、心からそれに頭を下げることだと思う。(p13)
朝に希望 夕に感謝
今日一日の実行こそが、人生のすべてである。(p20)
自ら燃える人は、人を燃やす力がある。思い切って遠慮せずに、人々に情熱を与えなさい。 (p25)
人生に無駄はない
人生に無駄はない。しかし無駄にするか、しないかはその人の心がけによる。
無駄の多い人ほど、苦労のし甲斐のない苦労をする。(p33)
独創とは、いいつけられたことをやるだけではない。それはたんなる経験では駄目で、寝ても覚めても考え、ひたすら仕事に対して一層よりよきことを考え出すことである。
ただ一生懸命に真面目にやるとか、熱心に仕事をするだけでは駄目で、独創とは与えられた仕事に生命をかけてよりよき道を見つけることである。
絶えず新たしい事を考えて創造せよ。(p44)
実行とは、覚悟をきめ、肚を据えて、目標に向かって進むことである。
かしこいことを言うだけではだめである。実行が出来なければなにもならぬ。結局実行により成就する。(p44)
仕事は祈り
仕事は祈りであるということは、自らの最善を尽くして、それ以上は神に祈るということである。
仕事は祈りである。仕事は人生を内容づけ、価値づけるもので、人生の目的そのものといわれよう。(p48)
一流の人は明るい
くよくよする人は、ストレスがたまって早死にをする傾向がある。(p70)
大人は日に新たに、日々に新たに成長するものである。(p71)
道というもの
人生は不思議そのもので、自分の工夫で生きておるのではなく、生かされて不思議な生命を生きておるのである。(p85)
生かされて生きる
修養と人生、仕事と人生は一つである。
人生をはなれた修養はない。また仕事をはなれて人生はない。(p91)
自己との対話
自己との対話は、よく考えることである。
よく考えることは、感謝することであり、拝むことである。(p106)
自らを拝む
今日一日の生活、実行こそが人生のすべてである。
この実行こそが、われわれに絶えざる希望と、道を求めてやまぬ情熱を湧きたたせてくれるのである。(p114)
健康だけでは健康はわからない。一度その健康をこわして、しみじみと健康がわかる。健康のありがたさが本当にわかるのである。(p115)
一日生涯
一期一会とは静かであっても、生命のかかった、そのうしろには燃えるような火があってこそ一期一会である。
仕事でもよい、お茶を喫するのもよい、後ろに燃えている火がなければならない。
明日のことはわからない。只今に生命をかけて打ち込む情熱が大事ある。
自らを礼拝し、自らの心に頭を下げて、言葉を超えた無限のものにひたすらに頭を下げることである。(p123)
四苦即四喜
病とは、無理があって起こる故障である。治療、修繕の出来る病気でなければ、故障即ち死ということになって大変である。
そうではなく、故障の軽い中に病気に気付き、治療のチャンスがあたえられることはむしろありがたいことではないか。(p136)
病気とはいうのは、無理をせずに長生きをする一つの過程と思われる。(p137)
私は糖尿病のおかげで、そのため注意をしているので長生きをしているように思われる。病気は困るというより、考え方によれば、与えられた生命を無理なく長生きさせるためのものであり、それは喜びであり、感謝である。(p137)
馬場恵峰書
2019-08-06 久志能幾研究所通信No.1286 小田泰仙
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