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2017年8月 4日 (金)

書天王の教え

 高野山中門に立つ四天王像は、邪悪が聖地へ侵入するのを防ぐ守り佛である。その門をくぐると、上から睨む四天王の目に己の邪心を見透かされそうである。霊界入山前に、身体検査として睨んでもらうのも一修行である。自分の魂という聖地に入り込もうとする邪鬼を、四天王の目で精査しよう。

 四方向の一角を守る広目天は筆と巻物を持ち、入門するものを睨む。私は広目天を「書天王」と勝手に呼んでいる。人は書くことで、刀以上の武器を手に入れる。書かなければ身に付かない、覚えられない、人に伝えられない。筆で一文字一文字を写経として書いていくことで、般若心経が皮膚を通して体に沁み込んでいくのを感じる。腕力なき人でも、文書は自分を守り攻める武器となる。広い目で古今東西の世界を見て、人心物事の本質を見極める。その力が生きていく能力となる。

 動の姿で槍を持ち南方を護る増長天の守護神に対して、広目天は巻物(書類)で西方を護る守護神として造像されることが多い。仏堂内では、ご本尊に向かって左後方に安置するのが原則である。その姿には様々な表現があるが、日本では一般に革製の甲冑を身に着けた唐代の武将風の姿で表される。筆と巻物を持った姿で作られる。

 

図1 松本明慶先生作  広目天  高野山  2015年10月8日撮影

 

2017-08-04

久志能幾研究所 小田泰仙  HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite

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