2022年8月22日10時15分、名古屋市北区の名古屋高速道路・豊山南出口付近で、空港行きの大型バスが本線と出口の分離帯に突っ込んで、横転して炎上した。後続の乗用車もバスに追突し、2時間半も炎上し続けた。運転手と乗客の2人が死亡した。脱出できた7人は軽いけがですんだ。死亡者はバスの運転手と乗客一人で、死因は焼死であった。
当時、助かった乗客は、割れた後部窓から脱出したようだ。もし横転しても後部窓が割れず、火災が起きていたら、全員焼死していただろう。たまたま乗客が少なかったから良かったが、満席なら大惨事である。
推定原因
その真因は人命を無視したバスの構造設計である。事故になった原因は、運転手の突然の病気、車のステアリングやブレーキの故障が取りざたされている。
しかしどんな原因で事故が起きても、バスが炎上するのは、構造自体に問題がある。
ステアリングやブレーキの故障も取りざたされているが、検討の結果、運転手の突然の疾患が、一番可能性が高い原因である。ステアリングやブレーキの故障なら、運転手の回避行動がとれたはずだ。ステアリングが異常なら、ブレーキをかけ停止すればよい。ブレーキ異常なら、エンジンを切ればよい。そうすればあんな事故にはならない。
たとえ運転手の突然の疾患が第一原因でバスが横転しても、火災を起こすのは、構造的欠陥がある証拠である。
構造欠陥
このバスには前部のタイヤの上に燃料タンクが設置されている。その容量は380ℓである。事故の直前に燃料を満タンに補給して、事故時は380ℓの軽油が引火して、2時間半も燃え続けた。軽油はガソリンより引火温度が80℃も高いが、引火すれば、ガソリンと同じ勢いで燃える。
問題は、バスが正面衝突しても燃料タンクが破損しない構造になっていなかったことだ。燃料タンクを守る骨格も無かったようだ。中央分離帯への激突速度は時速60キロと推定されている。高速道路を走るバスなら100キロで衝突する恐れもあり、時速60キロで衝突してあの火災では構造的な安全性に問題があると言える。
そもそも燃料タンクを車体の前面に設置する設計思想自体が異常である。しかもその燃料タンクをガードする骨格もないようだ。この構造は、三菱ふそうだけでなく、日野のバスも同じ構造のようだ。
以前もこの種の事故はあったはずだが、三菱ふそうのバスで今回の事故が起きて炎上したのは、三菱ふそうには、特にその強度が弱かったとしか言いようがない。三菱ふそうは、あの三菱リコール隠しをやらかした会社である。
また日野自動車は、エンジン検査不正で商用車連合を2022年8月24日に除名されたばかりである。両社とも、安全への意識が狂っていると言える。
大型バスの燃料タンク位置
大型バスの燃料タンクは、非常に危ない位置にある。正面衝突、オフセット衝突をすれば、瞬時に炎上である。
写真は下記ブログより引用
Jバス車体の簡易な構造研究 - 私の思いと技術的覚え書き (goo.ne.jp)
https://blog.goo.ne.jp/wiseman410/e/868f1d65fa277c45d9de68c2f86cf42d
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法的規制が必要
バスの構造安全規格で、100キロで正面衝突しても燃料タンクが破損しない構造が必要だ。それがなかったのが、今回の惨状の真因である。その面の法整備が至急必要である。
現在は、バスやトラック、タクシーで、年間300件ほどの運転手の突然疾患での事故が起きている。その際に、燃料タンクが破損して、今回のようなバス全焼事故が起きる恐れが高い。
自己防衛
私は恐ろしくなった。今後は、法整備が終わり、安全が確認できるまで、高速道路を走る高速バス、観光バスには乗らないようする。
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2022-08-27 久志能幾研究所通信 2474 小田泰仙
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