山路先生から連絡を受け、木彫の龍の撮影に行ってきた。山路先生の仲間の彫刻師後藤大地さんが全長3mの龍を彫り上げたので、撮影をして欲しいとの依頼である。ソニーα7m4と三脚を担いで後藤さんの工房に撮影に出かけた。
その素晴らしい姿に見とれた。後藤さんの話では、この龍を彫り上げるのに3ヶ月を要したという。これから、対の龍を彫る段取りで、8月中に仕上げるとのこと。その時は、正式に再度、撮影をする予定である。今回は彼の工房内の撮影で、少々勝手が悪かった。高性能シフトレンズと三脚の出番はなかった。
架空の存在を現実化
龍は架空の動物である。それを実在の動物のように彫るのは高度な技術だ。明治時代の名彫刻家も、実在の動物の彫刻は素晴らしかった。しかし架空の動物の作品は見れたものではないと松本明慶さんが言っておられた。それは仏様の彫刻でも同じだ。その先生の作品で、仏様の腕や足の配置で、実際に立ったらバランスがおかしい作品が多かった。しかし名声があるとそれを無視されて高値で仏像が取引される。だからこそ、自分の目で見て、納得できる作品を見極めるべきだという。
弁財天
私は、今計画中の猫ホールのロビーに弁財天様を芸の神様として飾り、その上に後藤さんの龍を置くのも夢である。弁財天と龍は合うのだ。弁財天は五穀豊穣や雨ごいを司る神様だ。その弁財天の頭には農耕神・宇賀神(髭を生やした翁で、体は白蛇体)が乗っている。その翁は龍の化身である。
弁財天の起源は古代インドの聖河サラスパティーを神格化した女神である。水の神、豊穣を司る神として信仰を集めた。後年には、弁舌・音楽・福徳・福財の神としても信仰された。箕面公園の龍安寺には、弁財天の銅像があり、近くの宝塚のタカラジェンヌ達が芸の向上の祈願で、よくお参りに来る。その箕面公園内の研修所で馬場恵峰先生の講義を聞いた日が懐かしい。そのご縁で、弁財天が芸の神様であることを知った。
心技体と経営力
まだ実現していない夢を見る事は、その完成した姿をどれだけ想像して創り上げられるかで、その実現度が変わってくる。夢の実現のためには、夢を見るだけでなく、現実的に肉付けをする技量が必要とされるのだ。それが経験であり知見で、総合的な見識力である。無から有を生じさせるには、心技体の総合力が必要だ。そのための修行が必要だ。それが芸事の基本である。
経営も芸術である。自分の人生経営で、芸力を発揮して、これからの人生を作り上げていきたい。既製品の人生ではつまらない。
彫刻師後藤大地さん 後藤さんの工房にて
対になる龍の素材、壁にその概略図
工具
後藤大地さんが「龍の造形大賞2021」で入賞した作品
日本最初の弁財天像 タカラジェンヌのお参りが絶えない
龍安寺 箕面公園 2010年11月27日撮影
松本明慶大仏師作 弁財天 『大仏師 松本明慶 作品集』(小学館)より
松本明慶仏像彫刻美術館の掲載許可は得ています。
2022-08-05 久志能幾研究所通信 2453 小田泰仙
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