墓改建の設計方針、人生シナリオ

 

 基本方針は、「華美に走らず目立たないが品格あるお墓を作る」である。大きな威圧感あるお墓でなく、現状のお墓をベースに改建する。ごてごてとしたデザインではなく、現代風のスマートな要素を盛り込んだお墓とする。

 

現状を踏襲

 現状のお墓サイズは竿石が9寸(約27㎝)の普通の大きさある。しかし当初は、自家のお墓だけの改建予定が、叔母の死とその家の絶家の為、それを含めて建てることになり、結果として、お墓を3基も並べることになったので、少々目だってしまったのは想定外であった。

 石屋さんの話によると、供養塔まで作る家は全体の3%である。だから供養塔を含めて3基もあるので、大変珍しいという。確かに、周りを見渡してもせいぜい2基のお墓が大半である。北尾家の墓は、現状が供養塔を含めて4基の墓石から構成されていたので、従弟の家の墓と合祀して、3基のお墓を同時に作るご縁を頂いただ。お墓は、作りたくても作るご縁がないと作れない。私の統制外のご縁となった。

 

プロジェクトの進め方

 このお墓造りは、私の人生の最大のプロジェクトになった。プロジェクトを正しく推進させるためには、本を読むのとは逆にする。本は最初から順番に読んでいく。それに対して、プロジェクト推進や会社経営は、結論や完成姿から逆算して、それが実現できるように進める。それを成り成行きに任せるからうまく行かない。その第一優先事項が図面の作成である。

 

人生の進め方

 人生経営でも、自分の人生目標やその姿が曖昧だから、成行きの人生を送る羽目になる。自分の人生の目的地を明確にして、人生を歩むべきだ。人生は本を読むのとは違う。自分で脚本を書かねばならぬ。その結論はどうするのか、それが問われる。

 人生で偶然は必然だが、人生の行き先の基本的方針が明確なら大きく道から外れることはない。

 

異世界の仕事ぶり

 デザインのこだわりのため、何回も図面を書き直すこととなった。前職の仕事では、上司の検図、設計審査の結果で、図面の書き直しなど当たり前であるが、お墓の図面の場合では珍しいようで、しっかり追加料金を取られた。お墓の製作数量が少ないためか、CADレベルも技量、図面管理レベルも私の20年来の機械設計の経験のレベルから見て、業界のレベルが低い。市場規模からいって致し方ないようだ。

 破線と実線の間違いや、図面作図ミスを指摘することになって、図面屋さんに煙たがられた。またお墓の図面は、尺貫法とミリの混在した図面であるので、戸惑ってしまった。

 一般機械設計で、ISO9001を取得していれば(取得していなくても)、図面に作図者名、検図責任者名、日付を入れるのが常識であるが、それが全く記載されていない図面を見て、世界が違うと感じた。まずその図面に表題欄がない。これがカルチャーショックである。お墓の部品図面まで要求した顧客は初めてとのことで、カルチャーショックを受けた。なにせ安い買い物ではないのだ。

 自分の作った作品にサインを入れて責任を明確にする。それを検図した上司もその責任の所在を明らかにする。それが20年来、図面を描いて来た私の世界であった。またそれがISO9001の品質保証の世界である。それが通用しないのが墓石の設計図であった。それが職人の世界のようだ。

 

 今回の墓改建では、基本方針を明確にして取り掛かったので、初めての経験であるが、製作途中で各種のトラブルに遭遇しても、あまり右往左往せず対応できてよかったと思う。やはりクライテリアを明確にして、何事も取り組むべきだと再確認した。

 

2021-08-01   久志能幾研究所通信 2107  小田泰仙

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