文を作る修行は技巧をこらさないことで進歩し、道を行う修行はうまく立ちまわろうとしない事で成就するという意味の菜根譚後集九四である。
菜根譚二巻は明の洪自誠の著。この書は、宋の汪信民の「菜根を咬み得れば一事をなすべし」という言葉から取ったもので、その意味は、淡泊に甘んじ、物質に心を奪われず貧困に安んじて人生を送れば困ることはない、と言うのである。
私の父は此の本を写し学びとったのが今も手元に残っている。私子供の頃からこの勉強の話しは聞かされて居た。今日今の私がこの本を学び、活用することとなる。家庭教育の成果に合掌する。恵峰述 (2015年)
以上は馬場恵峰書『心に残しおく古訓言と恵峰折々の漢詩、詞文集26』の冒頭の前書きである。恵峰先生の写真資料を見直していたら、この文が目に留まった。
この歳になって人生を振り返ると、若い会社勤めの時代、なんとか手柄を上げて人並みに出世したいと頑張っていた己が滑稽に見える。ホームランを打つ事など考えず、ひたすら業務を全うし、地道に仕事に生きていく(菜根を咬み得る)、それが人生の一番の近道であったと気が付くのだ。気が付いた時はその世界を去った後である。その世界では失敗であったが、その失敗を次の世界で役立たせるのが智慧である。人間は一足飛びに賢くはならない。
反・菜根譚の菅総理
菜根譚の目から見ると、何を菅総理は焦っているのかと、哀れに見える。何もこの酷暑の時期にオリンピックを開催するとは、大前提の開催時期が間違っている。それをコロナ禍が教えてくれた。
この酷暑の時期を選んだのは、IОCの金儲け至上主義である。TV放送権での暴利を狙ってのことで、開催の最適な時期や、選手や国民のことを考えたのではない。雨が降れば傘をさす、コロナ禍があるのだから、1年順延か中止にすればよい。菅総理が支持率低下の挽回のため、オリンピックの強引開催で、支持率回復を願う愚かさがにじみ出ている。
日本はよき指導者に恵まれない不幸である。それは全世界でも同じようだ。アメリカ、フランス、ドイツ、ロシア、中共、韓国の全ての指導者に当てはまる。だから世界の混迷が続く。すべての指導者に利他、小欲の精神が欠けている。それを選んだのは、国民である。まず自身の生き方を見直すべきなのだ。
『心に残しおく古訓言と恵峰折々の漢詩、詞文集26』を説明する恵峰先生
2015年10月26日 知己塾で
2021-07-31 久志能幾研究所通信 2106 小田泰仙
著作権の関係で、無断引用を禁止します。