色は匂えど散りぬるを(死界)

 

 人の器官には寿命があり、結果として人には限られた寿命しか与えられていない。いつもは忘れているその原則を、私の師の死で思い知らされた。

 

 2016年7月15日、後藤先生に連絡を取ったら、背骨が疲労骨折して安静治療中とのことで驚いた。別にどこかで打ったわけではなく、寝ているだけで疲労骨折をしたという。治療は安静にしているしか手がないという。寝たきりになると足腰が弱って、ますます体力が減退するので心配であるが、私には、アドバイスを為す術さえない。

 

 先生は現在82歳、食事、運動にも特に気を付けて生活を続けてこられて、血圧も薬を飲まれてはいるがほぼ正常、頭脳明晰、目も近視以外は正常である。先年、心臓の手術をされた際、大量に投薬された薬のせいで、体調がおかしくなったという。それも影響しているかもしれない。(2016年当時)

 

 「100歳の論語」の講師を務められた伊與田覺先生も、2016年11月25日、101歳で亡くなられた。その最後のセミナーで先生とツーショットの写真を撮って頂いたのは、良きご縁である。

 

2016年7月の馬場三根子先生からハガキの文言で「梅雨はまだ開けきれず曇ったりのお天気で、私ども高齢者は体のあちこち痛みます」を読むと、ドキッとする。いくら健康管理に注意を払っても、もって生まれた個体差と加齢には如何ともしがたいのを、自分の体と後藤先生の病状で痛感した。

 その馬場三根子先生も2020年3月3日に亡くなられた。その9か月後、2021年1月1日に馬場恵峰先生も亡くなられた。

 

 河村義子先生も2018年12月25日、61歳でがんが原因で亡くなられた。その直後、私にもがんがみつかり、2019年2月に手術をして、闘病生活に入った。手術後3年経っても、体調は元に戻らない。

 

 丸順の今川順夫会長も2019年6月に94歳で亡くなられた。最後の期間は、周りの怪しい取り巻きに面会を邪魔されて、会うことが出来なかった。それが原因と推定されるが、師が興した会社も経営不振になり、他社に吸収された。それもご縁だろう。

 

 今まで元気であった多くの師を間近に見ていると、健康管理をしっかりすれば、誰でも90歳までくらいは楽勝だと勘違いをしていた。人間は生物である限り、いつかは寿命が来る。

 

Dsc04341s 河村義子先生の最後の公式公演 ドレスデントリオとのニューイヤーコンサート

 2018年1月13日 クインテッサホテルにて

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 ニューイヤーコンサート後のパーティで

 これが私のカメラが河村義子先生を捉えた最後の機会
 2018年1月13日 クインテッサホテルにて

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 馬場恵峰先生の元気な姿を撮影した最後の写真
 馬場三根子先生の2七日にて  2020年3月15日

 

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馬場三根子先生の2七日にて  2020年3月15日
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最期の教え

 2022年の現在、この5年間で馬場恵峰先生を含めて6名の師が此の世を去ってしまった。そして今度は同じ世代の仲間の訃報が入る時期となる。今度は自分の番なのだ。師の最期の教えが「あんたも何時かは死ぬんだよ」である。

 

仏壇の花の命

 そんな意識で仏壇に供えた花を見ると、同じ花でも1週間も経つと、まだシャキッとしている花、萎れて首を垂れている花とその差が歴然とあるのに考えさせられる。いくらお水を替えても植物毎の寿命の差は如何ともしがたい。まるで人間の寿命の差を見るがごときである。ご先祖様は仏壇に供えたお花で人生を教えてくれている。

 

人生は、色は匂えど散りぬるを

 である。どんなに美しく咲き誇っても、どんなに栄華を極めても、生ある者はいつか散る運命である。そのなかでどうやって生きていくかが問われる。その中で一番大事なのは健康管理である。死んでもいいから健康管理最優先である。生死は佛様が決めてくれる。これこそが老計・死計である。

 

 健康の「健」は体の健やかさであるが、「康」は心の健やかさである。ストレスへの耐力がないから、タバコや食べ過ぎ、運動不足に陥る。その根本原因を無くさないと、健康管理もままならぬ。寿命に個別差があるのは致し方ないが、せめて頂いた寿命は100%を全うしたいと思う。

 

緩慢なる自殺

 もって生まれた寿命の個体差を、更に拡大する因子がタバコ、大食・飲酒、運動不足、ストレスである。若いときは寿命など意識にも上らないが、還暦を過ぎると、あちこちと体の不調が痛切に意識させられる。そんな大事な寿命を、煙草や大食、過度の飲酒の習慣で短くしている人は、命と医療費の無駄使いをしている。火葬場で灰になる前に、タバコで約10年間の命を煙にしている。

 

 ガンになる人が全体で62%に達する現代で、その原因が、タバコ30%、大食・飲酒30%、運動不足5%の影響因子だという。分かっていて、体に悪いことを続けるのは緩慢なる自殺である。そんな命があるなら、金を出すから売ってくれと言う難病の人がごまんといる。タバコは心の病気である。いくら忠告をして禁煙を説いても、ニコチン地獄に堕ちた人を、素人では救い上げられない。ニコチン中毒症という病気なのだから、医師の治療を受けないと禁煙はできない。病院に行くか行かないかは、己の命に対する慈しみがあるかどうかである。

 

命の認知症

 肥満も自分の命の認知症なのだから、心を直さない限り、肥満は治らない。食べても食べても満腹感がない飢餓地獄は、過度なストレスが生きる目的を喪失させ、諦め細胞を増殖している。根本原因を除去して心のガン細胞の増殖を防がないと地獄から抜け出せない。何の為に生まれてきて、頂いた命をどう生かすのか。なぜ死に急ぐ。息をしている内は、未だやるべきことが残っている。生き急げ。やるべきことに命をかけよ。それが死計である。

 

ニコチン地獄に落ちた衆生

 タバコが原因での死者は、日本で年間12万人である。世界では600万人である。ニコチン地獄に堕ちた衆生を救い上げることは、慈悲深くとも非力なオダ佛様にも難行である。死神が、禁煙できない弱い心を爪で掴んで手放さない。

 タバコの害は、煙草のみだけでなく、妻も子供も殺す。タバコ飲み以上に、副煙流は、回りの人に害を与える。タバコを吸う本人は、タバコのフィルターで害が減るが、高温でニコチンを加熱した副煙流が猛毒として周りにまき散らし、家族を直撃する。そうやって妻が乳がんになる。

 

肥満地獄

 肥満が原因による死者は、日本で年間15万5千人。全世界では400万人である。肥満は佛様からのイエローカードである。食べ過ぎが体に現れているのに、それを認識できず、食べ過ぎを止められないのは、認知症と言ってもよい。肥満が糖尿病患者を作る。糖尿病患者は2千万人に及ぶ。日本人の約2割である。それががんの遠因ともなる。肥満は万病の元である。

 糖尿病での死者は年間1万3,969人 平成29年 (2017)である。新型コロナの死亡者数より多いのだ。

 

細胞の窓際族

 運動不足による死者は年間5万人である。死亡原因の第三位である。全世界では530万人が運動不足が原因で死んでいる。適度な運動をしないのは、体の細胞が適度な運動を欲しているのを無視する自分への冷酷な仕打ちである。適度な運動をしないのは、自分の細胞を窓際族にするようなもの。その先は自分株式会社からの早期退社、細胞の早期死滅しかない。頭も使わなければ、脳細胞の死滅で認知症になる。「使わない器官は退化する」が生物の鉄則である。その体を使えるのも、今のうち、生きている間だけなのだ。

 

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 山路徹先生画

 

2022-07-31   久志能幾研究所通信 2448  小田泰仙

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