豊かで福のある人生を送るためには、安物を買うのはご法度である。安物にはワケがある。安物には製作者の魂が籠っていない。激安品は奴隷労働で雑な作りである。激安製品は、買った本人も安いからとつい粗雑に使う。だから早く壊れて、また買わねばならぬ。安物に囲まれて生活すると、薫習として心までが貧しくなる。安物買いの銭失いである。
モノつくりの現場
私は技術者として、企画、研究開発、設計、生技開発、製造、教育部門で38年間働いたから、モノづくりでの安物の意味がよくわかる。品質保証をして、安全安心な製品を造るには、相応の人モノ金が必要で、相応の価格となる。
特に車の部品開発・製造では、そのプロセス如何で人の命に影響を及ぼすので、その品質保証は必須である。そのためにその確認試験をするテストコースも必要となる。最低100億円程の投資が必要である。それを投資しても、一銭の儲けもでない。それどころかその維持管理費で莫大な金がいる。しかしそれがないと世界の自動車部品業界で戦えない。前職の会社も規模5千人の「中小零細企業」の時は、その投資が出来なかった。自動車部品業界では、規模5千人の会社は「中小零細企業」である。私も企画部門で、テストコース建設を計画したが実現しなかった。ない袖は振れない。いわば年収400万円の生活で1000万円の金食い虫の別宅試験場を作るような状況だ。それが実現したのは、二つの会社が合併してからであった。売上高1兆円規模の会社でないと、テストコースも造れないのが自動車業界の現実である。
命と向き合う
部品のコストダウンの取り組みにしても、その変更に関する設計審査、コストダウン会議を何度も行い、その度ごとに4時間も5時間も激論を戦わせることも度々である。たった一つも部品のシールの締め代を決めるにも、上下限品を作り、その耐久試験をしてからでないと採用されない。そういう泥臭い取り組みをして自動車部品2万点の部品が作られている。
その体験から見て自動車価格は安いと思う。それぞれの正規工程を怠るとリコール問題が出て、役員の首が飛ぶ。下手をすれば業務上過失致死罪にも問われる。だから自動車部品の開発は真剣なのだ。
エアバッグの死亡事故を起こし、その原因追及を蔑ろにしたタカタが、倒産したのは当然の結果である。リコール問題で対応を誤った三菱自動車が経営を迷走させているのは、経営の基軸があやふやであるからだ。縒りに酔って、カルロス・ゴーンの傘下になるなど、狂気の沙汰であった。その後の顛末は予想されていた。
「真」とは
真は、人間の体から首を刎ねた形の象形文字である。その昔、戦いの後、討ち取った敵の数を数える時、正確に数えるため、首を刎ねた体の数で確認した。それが「真」である。
激安製品
激安製品は、そのご正道の開発プロセスでどこかが欠落している。ハイテク製品の開発には、膨大な技術開発費が必要で、それが製品の価格に大きな比重を占めるのに、安く販売できるのは、技術を不法に盗んだとしか言えない。それを知っていて購入するのは、自分達で自分の国を壊すことになる。
今の安い輸入製品は、ウイグル族の人権を壊して生産された産物である。工業製品しかり、臓器移植しかりである。中国での臓器移植にかかる費用は、日本や欧米の費用に比べて劇安という。しかし安いものにはワケがある。
高いモノを大事に長く使うこと。モノにも魂が宿っている。モノを大事にしよう。それが自分の運勢をよくする。
安いものを買っていると、その労働賃金に日本の給与水準が追従してしまい、日本が貧乏になっていく。日本の現実は、この30年間、日本人給与の減少傾向が止まらない。日本はどこかでボタンをかけ間違い、日本経済が負のスパイラル降下に陥ったのだ。
福禄寿
人生で一番大事なものは、自分の体である。それを支えるのは食事で、食費を削るために安い食材を食べていては、人生を削る事になる。食事はエネルギー補給だけが目的ではない。自分の体を作っているのだ。
人生で大事なことは、自分の人生生活を支えるモノを大事にすること。それをケチっては、人生が崩壊する。それでは福禄寿にならない。
人生を豊かにするために少し余分にお金を払おう。
2021-09-07 久志能幾研究所通信 2144 小田泰仙
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