(泰平の眠りをさます上喜撰(蒸気船) たった四盃で 夜も寝られず)
(ペリー総督が率いる黒船が江戸湾に現れた時に歌われた狂歌)
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メンテナンスフリーで一体作り巻石
従来式のお墓は、その土台を巻石で囲こむ「巻石部の土台」で構成される。この方式は、組み合わせた巻石部がずれたり、土台に蒔いた砂利の間から雑草が生えたりして見苦しくなりがちである。その防止のため、手入れが大変である。当家は遠方のお墓なので、その工数を少なくしたい方針で改建を進めた。
その昔、父がお盆の墓参りに出かけた時は、炎天下でその周りの草取りが大変だったという話をよく聞かされた。そんな作業を無くすため、お墓のメンテナンスフリーの実現を計画した。
石芝台も、一般的な工法で砂利を敷くと、その隙間から草が生えてくるので、除草の手間も大変で、それを考えて一体構成の石芝台とした。また一体構成の石芝台なら経年変化で枠石がずれるようなこともなく、耐震構成ともなる。地震や雑草の心配をしなくてもすむ。これでご先祖様も安心してのどかに永眠して頂ける。私も現世で働いた後は、のんびりと永眠できる。
土台に雑草が生え、巻石がずれた例
石芝台の構成 どうしても経年変化で隙間ができる
一枚作り巻石のご縁
たまたま、お墓改建の計画中に、為替レート90円での「1枚ものの石」が在庫していると聞かされ、一枚作り巻石を作る決断をした。何かに背中から押された気がした。草取りの無駄排除や経年変化防止をする目的で進めたが、それが大きさで本邦初のものとなってしまった。
「一体作り巻石」のサイズは、9寸のお墓(普通サイズのお墓)を3基と墓誌、塔婆立てを配置すると、相応の大きさが必要である。最低でも横3.5×縦1.5mの大きさとなった。
下図は完成予想図
横3.5×縦1.5mの大きさに、石を切り出すため、一枚作り巻石の素材は3.9×1.9×1mの原石が必要となった。比重を3とすると重量は約21トンである。これを3.5×1.5×0.3mの板に加工した。それでも重過ぎるので、裏側を軽量化のため80mmほどの深さで全面削り取っている。それで2.5トンにまで軽量化をした。
そうでないと2.5トンのフォークリフトで運べない。それ以上の能力のフォークリフトは、墓地の門の大きさの制約で墓地に入れない。本来、重機を使えば搬入は楽であるが、由緒正しき門があるため、重機がお寺の境内に入れないという制約があった。
見えないご先祖の力
この大きな石が手に入ったのも、不思議なご縁の積み重ねである。一体構成に変更することに決断したのは、石田退三氏(トヨタ中興の祖、トヨタの大番頭)の師である児玉一造氏の言葉を思い出したからである。
「何でも悪いことに使う金でなければ、後からそいつは何とでもなる。金のことでトヤカク考えていて、やらねばならぬことの時期を失するなぞ、おおよそ馬鹿げている」(石田退三著『トヨタ語録』)
このご縁は、ご先祖様の見えない力に背中を押されてのことと思う。合掌
寺門の高さ・幅の制約
墓地の入り口の制限
馬場恵峰書
2021-08-04 久志能幾研究所通信 2110 小田泰仙
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