時間は、全ての人間に平等に1日24時間を与えられている。時間貧乏人になるか、時間の富裕層であるかは、本人の意識と智慧の出し方如何である。
「時間がない、忙しい、忙しい」と走り回っている時間貧乏人は、永遠に時間という富は手に入らない。それは、なぜ忙しいかを考えていない証拠である。
そういう人は、急ぎではないが大事なことを疎かにして、大事ではないが、急ぎのことを最優先にしている。
「忙しい、忙しい」と走り回っている人に限って、時間にルーズで、パチンコ店の駐車場にマイカーが長時間駐車してある。それを目撃した恵峰先生は呆れている。
そういう人に限って「恵峰先生から書道を習いたい。今は忙しいから閑になったら来ます」という。そう言っているうちに、忌中という札が玄関に下がる。それを4,5年前に講義で言われた恵峰先生も、今年亡くなられた。歳月は人を待たず。時間は命なのだ。
時間の富裕層
時間の富裕層は時間の有限性を知っている。その限られた一日のうちで、一定の時間を社会奉仕活動に費やすことは、限られた時間を有効に使う訓練になる。またその過程で、社会の実相を見させてもらえる。それが今後の自分の生き方を変える活きた経験となる。
時間をかけた社会奉仕活動は、お金の寄付より価値がある。10年後、元本に利子をつけて仏様が返してくれる。この世は奪った分が手に入るのではなく、与えた分が倍返しで返ってくる(五右衛門風呂の定理)。グローバル競争社会とは対極の世界である。与えない人は、何も与えられない。それが孫の代に返ってくるときもある。可愛い孫が大喜びである。今の自分の幸せは、ご先祖様が積み立てた功徳の貯金の配当を得ているに過ぎない。
「自分信用金庫」に功徳の貯金をしよう。貯金する過程で道が開ける。ペイオフもなければ、差し押さえも預金封鎖もない。格付けAAAAの超安全資産である。
「雑詩其一」 陶淵明 五十歳のころの詩
人生無根蔕
飄如陌上塵
分散逐風轉
此已非常身
落地為兄弟
何必骨肉親
得歓當作楽
斗酒聚比鄰
盛年不重来(盛年重ねて来たらず)
一日難再晨(一日再びあしたなりがたし)
及時當勉励(時に及んでまさに勉励すべし)
歳月不待人(歳月は人を待たず)
(意訳)
人生には根もヘタ(蔕)もなく、舞い上がるチリ(塵)のようなもの。風に飛ばされて、もとの状態を保てない。地に舞い落ちた所に兄弟が生まれる。だから肉親だけにこだわる必要はない。嬉しい時には心ゆくまで楽しめべばよい。酒をたっぷり用意して近隣の皆を集めよう。若い時は二度とは来ない。一日のうちに二度の朝はない。勉強できる時に勉強しよう。歳月は人を待ってはくれない。
2021-04-17 久志能幾研究所通信 1992 小田泰仙
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