「人間は本質的に狂の部分を持っている。狂っているときが一番正常で健全だ」 ギリシャの哲学者セネカ
狂は純粋なのだ。純粋から成果が出る。革命は狂から発する。狂でないから、妥協、浮気、醒めた目、無責任が己の魂を支配する。純粋に行動する人間に神仏は味方する。
狂にも、正しい狂と誤った狂がある。
江戸城無血開城の狂
慶応4年(1868年)、山岡鉄舟は幕臣として、清河八郎とともに浪士組を結成。江戸無血開城を決定した勝海舟と西郷隆盛の会談に先立ち、官軍の駐留する駿府(現在の静岡市)に辿り着き、単身で西郷と面会した。山岡鉄舟は狂して、明治維新の革命の動乱期に、押し寄せる怒涛のような大波を押し除け、江戸城無血開城を実現させ、徳川慶喜の命も助けた。
西郷隆盛は山岡鉄舟の人間性を「金もいらぬ、名誉もいらぬ、命もいらぬと言う人は始末に困るが、そのような人でなければ天下の偉業は成し遂げられない」と賞賛した。山岡鉄舟は世のために正しく狂した。
カルロス・ゴーンの狂
ゴーンは金の亡者になり、拝金主義に狂して、日産を支配した。彼は日産の資産を切り売りし、2万人の日産社員の首を切りまくり、前妻を切り、新車開発費を削り、人材育成を削り、ご縁の系列会社を切って、表面的には日産の業績は回復した。その裏で123億円を不正に貯め込んだ。表面的なことしか目に入らない狂ったマスコミは、見事に騙されてゴーンを名経営者として絶賛した。マスコミは拝金主義に染まって狂っている。ゴーンは狂ったのでなく、金に血迷ったのだ。
聖書に「汝の行動は汝の予言者である。」という言葉がある。当時のゴーンの行動が今を予言していた。当時、多くの人がゴーンの業務改革に疑問を持っていた。それに目をつぶってゴーンを絶賛したマスコミの罪は重い。
ゴーンは逮捕・保釈中に正常な判断が狂って、よりによって政情不安なレバノンに逃走劇を演じた。ゴーンの不正の捜査が進み、ゴーンのマネーロンダリングの闇が露見しそうになっていた矢先であった。レバノン政府が倒れれば、その身が危ないのに、狂したのでそれが見えなくなった。誤った狂を演じると、バチが当たる。お天道様に恥じない道で狂わないと、人生の正道を踏み外す。
ささやかに狂する
私も人並み以上に「ささやかに狂して」、仕事に狂い、文書道に狂い、テクニカルライティングに狂い、人財育成教育に狂い、飛行機に狂い、写真に狂い、音楽に狂い、仏像彫刻に狂い、高級車に狂って、今の私がある。狂っている時は、純粋な心になるので、私心と妥協が無くなる。つい最高のモノを求めたくなる。だからお金がかかる。
トヨタ自動車元副社長の大野耐一は「悪いことに使うのでなければ、お金は何とかなるものだ。」と言っている。彼はトヨタの工場への設備投資でそれを実行してトヨタの基礎を築いた。彼はトヨタの再建に狂して、トヨタ生産方式を創り出した。私はその言葉が励みとなった。何事もこだわりを持って事に当たらねば、人並み以上の成果は得られない。人並み以上成果とは、時間創出である。
不動心
「この道より外に我を生かす道なし。此の道をあるく。ただひたすら一本道。」とは、一つの道に狂して、精進することである。
馬場恵峰書 2012年
2020-01-27 久志能幾研究所通信 1463 小田泰仙
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