今回、浜松、高松、仙台と日本の三大国際ピアノコンクールの第一次予選を全て聴いて、その比較から、仙台国際ピアノコンクールで、下記の点の改善を要望する。
1.課題曲時間の変更
一次予選の課題曲の演奏時間が、40分では長すぎる。20分にすべきである。
浜松国際ピアノコンクールも高松国際ピアノコンクールも、課題曲の演奏時間は20分である。多く候補者から優劣を選ぶのに、40分の演奏を聴き分けるのは、困難がある。一次予選の課題曲は独奏曲で、協奏曲ではないので、20分がベストである。
それがプロの審査員でも辛いので、今回のアリーナ席の封鎖という愚行になったようだ。一次予選を聞く楽しみの素人の音楽愛好家にとっては、長時間(予選だけで3人連続2時間、連続で30時間)は辛く、なおさらである。人間の集中力は20分程度しか続かない。
私のような素人でも安心して聴けるように、最初の一次予選では20分で審査すべきである。なにせ36人も演奏する長期戦なのだ。それが3人続いて演奏すると、2時間の長さとなる。浜松国際ピアノコンクールでは、88名が演奏する。だから一人20分の演奏なのだ。それで演奏の差、ピアノの差が分かって、コンクールを聞く楽しみが出る。仙台国際音楽コンクールでは、それが阻害されている。
2.運営の変更
審査員の権限が大きすぎるようだ。見直すべきである。第三者の立場で、そのチェック機能を持たせないと、今回のアリーナ席の封鎖という醜態を再発させる。
現場責任者も観客の声を無視する態度では、国際ピアノコンクールの名が泣く。今のままでは、ド田舎レベルのコンクールである。危機管理上でもコンプライアンス上の規定でも問題である。
3.特色を生かす
仙台国際ピアノコンクールの他の2つの国際ピアノコンクール(浜松、高松)との差はなにか。それがよくわからない。その特色を打ち出し、アピールすべきである。協奏曲が特徴というが、一次予選ではそれは制限されていない。ファイナルでは、どのコンクールも楽団との協奏曲で審査が行われる。
協奏曲中心という独自のコンセプトを打ち出した解説をしたHPにあるが、それはセミファイナルとファイナルの課題曲で、公式HPで一次予選には、そんな制限は記載されていない。他の2つの国際ピアノコンクールでもファイナルは、同じく協奏曲の課題である。
国内三大国際ピアノコンクールの比較
一次予選の課題曲
◆浜松国際ピアノコンクール応募規定
5日間にわたり出場者全員の審査が行われる。(第10回は88人が出場)
練習曲1曲以上を含む自由な選択により20分以内で演奏する。最終日に第2次予選に進む24名を発表します。
2018年11月9日 浜松国際ピアノコンクール
◆高松国際ピアノコンクール応募規定
(A)バッハ 平均律Ⅰ、Ⅱ巻より1曲※予備審査曲と重複してもよい※予備審査曲と重複してはいけない
(C)1900年以降に作曲された作品
(B)ショパン 練習曲作品10または作品25より1曲
下記の(A)、(B)、(C)の順に演奏する。演奏時間は合計20分以上25分以内とし、繰り返しは自由とする。
◆仙台国際ピアノコンクール応募規定
任意の独奏曲で、35分以上かつ40分を超えない演奏時間のリサイタルプログラムを構成し、演奏する。
ただし、下記の作曲家の作品から1曲以上、かつ、10分以上の演奏を含めなければならない。
J.S.バッハ,ハイドン,モーツァルト,ベートーヴェン,シューベルト,メンデルスゾーン,ショパン,シューマン,ブラームス
・曲数、各曲の長さについては特に指定しない。ただし、ピアノ・ソナタを選んだ場合には全楽章を演奏すること。
・特殊奏法(内部奏法、プリペアドピアノ、トーンクラスターなど)を含む作品は選択の対象外とする。
2019年5月27日 仙台国際ピアノコンクール
2019-06-08 久志能幾研究所通信 小田泰仙
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