「人生航路で沈没」を防ぐ智慧の力

 人生航路で沈没しないためには、押し寄せる荒波に対して復元力をもつことだ。大きな波を受けて船が右左に傾くのは自然である。それを無理に踏ん張るから、沈没する。大波を受けて傾いても、柳のように受け止めて、元に戻る力を持てばよい。それを受け流す智慧がなくて踏ん張るから、さらに傾いて沈没する。

 

コンプライアンスとはなにか?

 コンプライアンスとは、遵法精神とも訳される。しかしコンプライアンスの源義は、機械用語である。剛性とは、ばねを1キロの加重を与えて、バネが撓んだ値である。つまりばねの強さである。その逆数がコンプライアンスである。式に表すと下記になる。

 コンプライアンス=1/剛性(μm/F)

 コンプライアンスとは、ある入力の値の力に対して、どれだけ撓むか、踏ん張れるかを表す式である。

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具体例

 船の設計では何が一番大切か?

 パワーステアリングを設計する場合、何が一番大切か? 

 人生航路で、何を重視するか? すべて同じ問題である。

 

 船がどんな波の力を受けようと、それに踏ん張る力があれば、耐えられる。それがなければ、柳のように受け流せばよい。それが復元力である。

 パワーステアリングで一番難しい設計要素は、真っすぐに走る操舵能力である。曲がるのは簡単だ。しかし道路のノイズである石ころや凹み等に邪魔されて、真っすぐに走るのが難しいのだ。道路の凸凹に影響されず、真っすぐに走る能力が、パワーステアリングに求められる。

 人生で試練を受けても、それに影響されず目標地に向かって突き進む能力のを表す言葉がコンプライアンス値である。賄賂を提示され、それで筋を曲げてしまえば、その賄賂金額がその人のコンプライアンス値である。それを高い値で持つことだ。それが難しければ、それを受け流す知恵を持つことだ。しかし、基礎体力としてコンプライアンスを高める努力は、人生で必要である。 

 

WASA号という事例

 WASA号は、1625年、スウェーデン国王 Gustavus Ⅱ世 Adolphus の命により建造を開始し、1628年に完成した。当時、世界最大の戦艦。

 排水量   1300 トン

 大砲     64 門

 乗員      435 人

 全長    61 m

 全幅       4.7 m

 全高       51 m

Photo_2 ヴァ―サ号博物館パンフレットより

 

ヴァーサ号博物館 見学記

 ヴァーサ号は、1628年に当時世界最大の木造戦艦として製造された。その約100 年前の1521年にスウェーデン貴族のグスタフ・ヴァーサがスウェーデンを建国し、1523年に王位に就いた。1630年に、ヴァーサ国王の孫グスタフ2世アドルフが、リボリアを征服し、ドイツの新教徒を保護するという名目で、ドイツに侵攻して、第3期30年戦争(スウェーデン戦争)を引き起こした。その後スウェーデンは領土を拡大して、大国時代を迎えることになる。当時スウェーデンは列強に伍し、その勢力拡大を計っていた。ただそれは長くは続かなかった。ヴァーサ号はその時代の戦艦である。その時日本は、やっと関が原の戦いが終わって、徳川の時代になったばかりである。当時の世界で、軍事大国で科学技術の先進国であったのがスウェーデンである。スウェーデンは、なんとドイツに戦争を仕掛けた歴史ある国でもある。かつ国王の名が、「アドロフ」には歴史の因縁を感じる。

 しかしヴァーサ号は設計ミスのため(頭でっかちの不安定構成)、1628年8月10日にストックホルム港から処女航海に出たところ、港湾を出る前に突風に会い、転覆沈没してしまった。大砲の積み過ぎが原因とも言われる。この点で、歴史的な名戦艦である。戦わずに平和的に?沈んだのだから、いかにも未来の平和国家スウェーデンを予見するようなエピソードと言える。とはいえ世界最大の戦艦を建造するとは、スウェーデンは当時の軍事大国であった。

 

 この艦は1961年に334 年ぶりに、水深31mの海底から引き上げられて修復され、現在はヴァーサ号博物館として展示されている。なにせ、沈んだ場所は分かっていたが、技術的な問題でこの時まで、引き上げることが出来なかったとか。極寒のバルト海の底に沈んでいたため、木造艦といってもあまり腐食もせず、原型をほぼ止めており、当時のスウェーデン黄金時代としての艦船装飾、彫刻像、備品等がつぶさに見えて、歴史的な鑑賞には興味深い。だだし、古い木造艦のため、暗く湿っぽい雰囲気はそんなにも楽しいものではない。

 

人生の沈没防止

 ヴァ―サ号は設計ミスで頭でっかちの構造だったのだ。象徴的なメッセージである。人生では、頭でっかちの人間が沈没する。人生では知識より智慧が重要なのだ。智慧が人生の沈没を防いでくれる。

 

人生の安定性

 人生で障害に出会って傾いても、沈没せず復元力があることが大事である。そのために平常心(揺れない心)、常を大切にする心が大事である。障害に出会って揺れてもいいのだ。揺れたら、元に戻る力を持てばよいのだ。

 その心は、準備、実行、後始末、整理整頓(6S)、危機管理から生まれる。

 

アンタは、なんぼで堕ちるんや

 遵法精神というコンプライアンスとは、己が提示された賄賂金額で、曲がるかどうかの値段の意味である。100万円で違法行為を許容すれば、己のコンプライアンス値は100万円である。違法行為に対して、せめて100兆円くらいのコンプライアンス値を持ちたいもの。国家予算と同じだけの金があれば、日本を変えることが出来る。

 

2019-06-03   久志能幾研究所通信 小田泰仙

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