河村義子先生の分身に出会う

 河村義子先生が逝去されて1週間たった2019年1月1日、友人とセントレアの「FLIGHT OF DREAMフライトパーク」に出かけた。そのショップに展示してあったボーイング707のジェットエンジンのタービンブレードカットモデルに、河村先生の面影を発見して、そのカットモデルを購入した。

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2018年1月のニューイヤーコンサート

 1年前の2018年1月13日に、ドレスデントリオと河村先生の共演の「ニューイヤーコンサート」をクインテッサホテル大垣で開催した。当時、河村先生がこの世の最後の演奏会と覚悟をして開催したとは、私には分かっていなかった。それでも開催にこぎつけるため、資金面、撮影、運営でお手伝いをできて、今にしてそのご縁に有難いと思う。そのドレスデントリオが、2018年1月7日にルフトハンザ航空機で到着するので、私はセントレアに出迎えに行った。

3dsc02821   2018年1月7日  ルフトハンザ航空機 セントレア着陸

4dsc02852   到着したドレスデントリオ

 河村先生が逝去されて1週間たった2019年1月1日、友人が当日、セントレアに行くというので、思いついてルフトハンザ機を含めて飛行機の着陸時の写真撮りを兼ねて、セントレアに出かけた。ところが、ルフトハンザ航空機は、当日のセントレア到着便はないのが分かり、撮影は空振りとなった。しかし、もう一つの来訪目的が、昨年末に開店したボーイング787の展示館「FLIGHT OF DREAMフライトパーク」の見学であったので、友人と見学して過ごして、今回のご縁に出会った。

 そこに併設されたショップで、ボーイング707のジェットエンジンのタービンブレードのカットモデルが売られていて、何か感じるところがあり、購入を決めた。値段は72,360円。残り2つの限定品だという。年初の最初の売上とかで、お店の担当者も喜んでいた。人は誰しも「限定品」「あと2つ」という魔の言葉に弱い。そのボーイング707エンジンの誕生年が河村先生の生まれ年が同じで、ジェットエンジンのブレードの役目が、ピアノの鍵盤を叩くことに重なって見えたから、ご縁を感じて購入を決めた。私が飛行機マニアであることも重なった。

 

陰の仕事

 ジェットエンジンのタービンブレードは、回転速度約10,000rpm、12時間の飛行(日本と欧州間の飛行)を年間150回するとして、その寿命が5年間として計算すると、ジェットエンジンのタービンは約5億回転して、旅客機の推力としての空気を後方に送ることになる。それで多くの海外旅行客を運ぶ仕事を陰で支えている。

 ピアノをモノにするには、一日8時間、10年間続けないと一人前のピアニストになれないという。単純計算で一秒に1回鍵盤を叩くとして計算すると、それを30年間続けると、3億回も鍵盤のキーを叩いてきたことになる。ひたすら鍵盤を叩いて、人びとに安らぎと喜びを与える音楽を世に送り続けているのがピアニストである。

 そのエンジンの製造年が河村先生の生まれ年と同じだと気が付いて、ご縁として購入を決めた。

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 川村義子先生の手 2015年1月23日

 

人知れず働くもの

 展示された目の前のタービンブレードが、人の見えないところで生きて仕事をすることの象徴のように感じた。人の目には触れず、小さな、当たり前の、繰り返しの仕事で、その長年の積み重ねが、社会に貢献していることを象徴していると感じた。飛行機の美しい着陸姿勢も、力強い離陸も、ひたすら巡航速度で飛行するのも、エンジンがひたすら回っているからできるのだ。しかしけっして表には出てこない。

 また30年前に、当日同行した友人が当時の職場で、GEからジェットエンジンのブレードを加工する機械の見積業務を私は横目で見ていた。その受注はできなかったが、私は見積用のエンジンブレードの実物を手に取って見たことをよく覚えている。それのご縁も購入を決めた一因である。

 

一燈を掲げて

 そのブレードを今日1月5日に、玄関に飾った。前衛芸術作品のようで、サマになっている。極限状態で稼働する部品には、贅肉が削がれ、極限の機能美がある。ブレードの曲面も芸術作品である。玄関に飾ってみて、見る角度によっては、十字架のように見えて、不思議さを覚えた。河村先生の家は臨済宗なので、キリスト教は関係ないが、言葉の綾で、十字架を背負い仕事をするという意味で、仕事の象徴として考えた。どんな小さいことも仕事として継続すれば、世の中に何かには貢献できる。仕事とは、ひたすら毎日毎日、同じことの繰り返し。その世の中に燈を灯す活動が集まって、大きな力となる。それが「一燈を掲げて暗夜を行く」(佐藤一斎著『言志四録』)と通じる。

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  馬場恵峰書 お手本として揮毫  2012‎年‎2‎月‎18‎日

 

2019-01-08 久志能幾研究所 小田泰仙

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