河村義子先生が亡くなられて1週間たった2019年1月2日、思いついて河村義子先生の為写経を行った。私はほぼ毎日写経をしていて、丁度、ご先祖様11名分の為写経が一巡した所で、しめくくりの最後として、河村義子先生の為写経をした。それでなにか心の平安を得た。河村義子先生の戒名「聖観院教音義愛大姉」が心に沁み込んでくる。
翌日の1月3日に彦根の自家の菩提寺を訪れ、12人分の為写経を納経した。1月3日はお寺も特に行事もなく、静かな茶室の中で、住職さんと河村義子先生の想い出を語り、春の追善供養の計画をお話しした。
何故写経をするか
馬場恵峰先生は今までに写経を1万5千字以上も書かれている。私が恵峰先生に「何故、写経をされるのですか」と聞いたところ、「それが一番のご先祖供養になるからだ」といわれた。それ以来、私もほぼ毎日、時間を見付けて写経をしている。
2017年4月にウィーンに行ったときも、ヒルトンホテルで、朝、写経をして心を落ち着かせた。私がウィーンに行った目的は、『ウィーンにかける六段の調べ』(英訳、ドイツ語、併記)を出版する計画があったからだ。河村義子先生が、戸田伯爵夫人の六段とブラームスの物語にご縁があった。河村義子先生は宗次ホールでその演奏会を公演されている。
現在の写経行
写経と言っても、一日に般若心経の2行を筆ペンで書くだけである。2015年に自家のお墓を再建した時は、構えてお墓の完成まで毎日斎戒沐浴して1枚の写経を書き続け、計110枚ほどの写経を書き上げた。それを新しいお墓の納骨室に敷いて、その上に移設したご先祖のお骨を収めた。よい功徳をしたと思う。
今は、一日、般若心経の2行分の写経で所要時間10分弱、1週間で般若心経の1枚の写経が完成する。「写経は一日2行でいい。そうすれば長続きする」と、馬場恵峰先生に教えられて、今も継続している。たまに寝過ごして書けない時もあるが、それをヨシとして自然体で継続している。なによりも、写経よりも自然に長く寝ることはよいことだ。歳をとると長時間の睡眠が難しくなる。睡眠を削って無理してまで写経をするのも本末転倒である。写経は書の勉強にもなり、多少は字がうまくなった。
上達の極意
やはり書かなければ、上達しない。写真も数多く撮らなければ、上達しない。文章も書かなければうまくならない。多くの人と接しないと、人を見る目は養われない。多くの失敗をしないと智慧はつかない。当たり前のことである。何も上達の秘密はない。
般若心経の内容は、読むより、写経した方が頭にスーと入ってくる。恵峰先生曰く、「10回読むより、1回写せ」である。これは記憶術でも言われる原則である。
物事は手で覚えるのだ。足で意志を表し、耳で相手の心を観る。目でモノを言う。口で世間を渡る。鼻で真贋を見分ける。多くの人は、手足口耳目鼻の使い方を間違えている。
推薦の写経手本
私が使っている写経紙は、馬場恵峰先生の推薦で、「しあわせへの道 羯諦写経」(お手本 山田無文老師 なぞり書き般若心経のお手本7枚、写経用用紙14枚)である。価格2400円ほど。私はネット経由で購入している。
使用する筆ペンは株式会社呉竹の「八号 くれたけ万年毛筆」。これはナイロン製の毛で、腰がしっかりしていて書きやすい。正式の毛筆だと、細かい字を書くには、腕がないと書きにくい。私は、この筆ペンで写経をしている。
2019-01-05 久志能幾研究所 小田泰仙
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