2018年12月27日の故河村義子先生の葬儀で、「世界で一流の音楽を楽しむ会」の事務局長田中重勝さんの弔辞を聴いて、初めて河村義子先生の知られざる活動の偉大さを知った。私は先生の最期の5年間のお付き合いだけであったが、その活動の一部しか知らずに接してきたことが恥ずかしい。
義子先生は5年前に病巣が見つかり、手術をするとピアニストとして生きていけないと分かると、手術を止めて対処療法の治療の道を選ばれ、最期までピアニストとして生きる決断をされた。私がそれと時期を同じくして先生と巡り合ったのもご縁である。それを周りに気が付かせず、活動されたことに頭が下がる。今思うと、先生の言葉に節々にそのことを示唆しておられたが、鈍感な私は気が付かなかった。それが悔いである。
義子先生とご縁ができてから、多くの良きご縁に巡り合わせて頂いた。別れの悲しみよりも、義子先生とのよきご縁に出会えて感謝です。出合いがあれば、別れがあるのが、この世の無常。よき出会いであるほど、悲しい別れである。河村義子先生(戒名「聖観院教音義愛大姉」)のご冥福をお祈りします。合掌。
下記は田中重勝さんの弔辞
弔辞
義子先生
こんなにも早く、悲しい別れの言葉を述べなければならないなんて、とても残念でなりません。
大垣市スイトピアセンターの音楽堂をこよなく愛した義子先生。
私が文化事業団事務局長の時には、音楽の専門家としてサポートをお願いしたところ、快く文化事業団アドバイザーを引き受けていただきました。
スイトピアをいつもピアノが響き渡っているところしたいとの思いに賛同していただき、ロビーでも使えるピアノを浜松へ購入に行った時は、この子が来たがっていると、小躍りするようにピアノを選定していただきました。
また、文化ホールと音楽堂のスタウェイをオーバーホールした時には、多くの人が演奏した思い出のピアノのハンマーを皆さんにプレゼントすることを一緒に考えていただきました。大垣市民病院でも、ロビーコンサートでのピアノを購入していただくよう一緒にお願いをしてきました。どれも義子先生に選んでいただいたピアノが設置されています。
また小さな子ども達にも本物の音楽を聞かせたいとの願いから、かすみの会の活動の一つとして保育園コンサートを続けておられたました。子ども達に夢を与えるこうした事業を文化事業団の芸術の贈り物事業として取り組む事とした時には、教え子達を次の指導者に育成するプログラムを加えるなど人材育成に余念がありませんでした。
さらには、小さな子どもにもクラシックをとの思いから、クリスマスコンサートを音楽堂や文化ホールで行っていただきました。しかもこれまで行ったことのない飲食を伴うもので、音楽を聴いてお菓子を食べ、ジュースをのみ、また音楽やバレーを楽しむものでした。文化ホールでは、ロビーでキャラメルポップコーンを楽しむこととしたため、ロビー全体がキャラメルの匂いと子ども達の歓声に包まれることとなりました。こんな事が出来たことを楽しい思い出として何回も何回も聞かせていただきました。
こうした子ども達を育てようという活動の中で、子と音の立ち上げ、子と音キッズへと発展させ、次の世代への橋渡しもなされてきました。
私が文化事業団事務局長を辞したのち、世界で一流と言われた演奏家の招へいと子ども達に本物の生の演奏を聴かせたいとの願いを受けて、世界で一流の音楽を楽しむ会を立ち上げ、多くの企業の方にも応援していただいてあしながコンサートを開催してきました。このコンサート後の感想文集には、子供たちの感動があふれており、開催してよかったと一緒に喜びあいました。
本年の2回目のコンサートでは、途中から病により入院を余儀なくされ、手術の前日で、苦しいなかでプログラムを作成していただくこととなってしまいました。しかもコンサートを聴いていただくこともできませんでした。しかし、感想文集を届けたときには本当に喜んでいただくことができ、ホットしたところです。
先日、病室に伺ったときには、来年9月に予定の3回目のコンサートについて、輝くばかりの目でお話をいただきました。演奏者としてヘンシェルはどうかと言って、早速メールをされましたので、私は東京芸大の澤学長にプロモーションをお願いする手紙を出しました。
でも、ヘンシェルから9月は無理で十一月ならとの返事に、それまでは私はもたない! 重勝さ―ん とメールで言ってこられた義子先生。
あまりにも早い旅たちで驚いています。
音楽を通して人を育てる夢に全力で立ち向かわれた義子先生。
いま、どんな音色の中におられるのでしょうか。ブラームスと六段の調べをきいているのですか?
多くの教え子達の心には、素晴らしい音色が刻まれ、音楽とともに生きる力が育っていくに違いありません。音楽は心の糧です。
成長する教え子の皆さんの姿を見守り続けてください。
義子先生本当にありがとう!
平成三十年十二月二十七日
世界で一流の音楽を楽しむ会
田中重勝
2019-01-04 久志能幾研究所 小田泰仙
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