2018年5月13日、大垣市文化センターの前を通ったら、「円空佛・木彫り作品展」のポスターが目に飛び込んできた。5月24日、展示会場に足を運んだ。
松本明慶大仏師のプロの仏師が作る仏像は、正装の仏像である。いわば高級料亭の料理である。それに対して、今回の展示会の作者・杉山正明さんが作る円空佛の仏像は、一般家庭の普段着のような身近な家庭料理の趣である。親近感を抱いた。
その昔、松久朋琳師の「仏像彫刻通信教育講座」に申し込み、仏像彫刻に挑戦したことがある。1枚だけ課題の模様彫りをしたが、哀しいかなサラリーマン時代の忙しさの為、挫折した。本当の夢は、深夜、仏像を彫りながら心を落ち着けて過ごす姿にあこがれたのだ。
2010年、松本明慶大仏師の仏像に出会って、また考えが変わった。その精緻さと美しさをみて、とても片手間や趣味で作れるものではなく、仏像は買うものと考えるようになった。
今回、杉山正明さんの彫る円空佛に出会って、さらに考えが変わった。その素朴で、それでいて品のある仏様をみて、感銘を受けた。なにも構えなくとも、自分の思いがこめられた仏像を彫ればいいではないか、と。寺院にある仏様だけが、本物の仏像ではない。身近に手を合わせることのできる仏様も、自分の分身である。
円空佛は信仰対象の仏師の彫る仏像ではなく、当時の庶民の心のよりどころとして彫られた。その荒い彫りの中に安らぎが見いだせる。私でも彫れそうだという仏像彫刻の敷居の高さを低めてくれる仏様である。
円空とは
円空(寛永9年(1632年)-元禄8年(1695年))は、江戸時代前期の修験僧・仏師・歌人である。各地に「円空仏」と呼ばれる独特の作風を持った木彫りの仏像を残したことで知られる。
円空は一説に生涯に約12万体の仏像を彫ったと推定され、現在までに約5,300体以上の像が発見されている。円空仏は全国に所在し、北は北海道・青森、南は三重県、奈良県までおよぶ。多くは寺社、個人所蔵がほとんどである。その中でも、岐阜県、愛知県をはじめとする各地には、円空の作品と伝えられる木彫りの仏像が数多く残されている。そのうち愛知県内で3,000体以上、岐阜県内で1,000体以上を数える。また、北海道、東北に残るものは初期像が多く、岐阜県飛騨地方には後期像が多い。多作だが作品のひとつひとつがそれぞれの個性をもっている。円空仏以外にも、多くの和歌や大般若経の扉絵なども残されている。
円空仏の特徴
円空仏はデザインが簡素化されており、ゴツゴツとした野性味に溢れながらも不可思議な微笑をたたえていることが特徴で、一刀彫という独特の彫りが円空仏の個性を引き立てている。一刀彫というのは鉈一本で彫り出した事に由来するが、実際には多数の彫刻刀によって丹念に彫られており、鉈で荒削りで彫ったに過ぎないというのはただの宣伝である。円空としては民衆が気軽に拝める、現代で言えば量産型の仏像として製作し、野に置かれる事を望んでいたのだが、そのデザインが芸術的に高く評価されたため、大寺院で秘仏扱いされる事もあった。
木喰仏
円空から後代の木喰も同様に日本各地で造仏活動を行っており、ノミ痕の残った鋭い円空仏に対し、表面を滑らかに加工し、後年には柔和で穏やかな表情を有した「木喰仏(微笑仏)」は円空仏と対比されている。
この項、wikipedia 2017/05/29 より編集
杉山正明氏
今回の「円空佛・木彫り作品展」で円空佛を彫られた大垣在住の円空仏師である。自宅に「蒲公英工房 杉山正明庵」を作り円空佛の彫刻に務めておられる。県立高校教師を38年間務め、2002年から故山田勝己師匠から彫刻の手ほどきを受け、円空学会に入って研鑽を務めて、この17年間で1万体ほどの円空佛を彫られた。2年に一回のペースで展覧会を開催されている。
東北大震災後には、岩手県の興性寺や、各地の寺院に千体仏を奉納されている。合掌
2018-05-29
久志能幾研究所 小田泰仙 e-mail : yukio.oda.ii@go4.enjoy.ne.jp
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