自分の命の値段はいくらか?

 還暦を迎えた自分の命の値段は、いくらで評価されるのか? 若く働き盛りなら、金に渋い銀行も2千万円や3千万円のローンを組ませてくれる。しかし己が60歳になったとき、いくらの金を銀行が貸してくれるか、その金額が自分に対する社会からの評価額である。

 

還暦で一億円の借金

 馬場恵峰師は60歳(1988年)の時、私財を投じ日中友好親善と社会奉仕活動の一環として日中文化資料館を建設された。建設費用(1億円)は銀行からの借入で、350坪の敷地に、日中文化資料館と図書館が建てられた。波佐見の実家・土地を抵当に入れての借金である。銀行に高額な生命保険にも入らされた。

 生命保険料が高いとこぼされながら、再婚するなら相手は保険金目当てだろうとご夫婦で冗談を交わされるユーモア精神が豊富である。24年間をかけて、2010年にその借金を完済された。完済時、御歳84歳であった。完済時には清治若先生と手を取り合って喜ばれた。

 建設当時は「荒瀬町」という名の通り先生宅しかなかった小山の寒村だが、現在は住宅地として多くの家が立ち並ぶ。今は大村市の高台に建つ図書館の二階から、大村湾と長崎空港、九州高速道路の夜景を見ながら、静かに思索にふけるのが楽しみと言われる。

1img_3558   日中文化資料館  

2 敷地への入り口 右手が図書館

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 玄関に12仏が並ぶ 201142

4img_3492 中国古代の石器が並ぶ。模造品だが、今はそれも手に入らないほど貴重品

5img_3605 図書館二階の書斎からの眺め

自分を値踏みして

 自分が還暦の身で、銀行から数千万円でも借りようとしても、おそらく貸してはくれまい。それを思うと、馬場先生の信用と言う黄金の器がまぶしい。そういう師にご縁ができるのは幸せである。私は人生の目標にしている。

 

後ろ姿の教え

 恵峰師が還暦の時に、一億円の借金をして24年間で返済されたという事実は、弟子たちに大きな励みを与えたようだ。岩手県と宮崎県の知人の社長が相次いで還暦を過ぎたのに、一億円以上の資金をつぎ込んで新し事業を始めた。二人とも功成り名を遂げている地方の実業家である。

 私も勇気をもらって、新しい仕事に一歩踏み出すことに背中を押してもらったようだ。66歳の身で出版業と写真業を始める勇気をもらった。感謝。

 

元気の源

 師の口癖は、「生涯現役、一生青春」である。福沢諭吉の訓言「世の中で一番」の「楽しく立派なことは一生涯を貫く仕事を持つ事である」を実践されている。そのために、書の仕事一筋である。前に紹介した「身閑夢亦安養心」も師の信条である。

 そのための健康面の配慮で、日頃から少食で、間食はしない。酒はほんの少々。日に朝晩、2回(一回30分)の庭の草取りで体を動かす。庭師もされる。庭と言っても350坪の敷地である。広大な敷地に草一本生えていない。多くのお弟子さん(女性)に囲まれて、書道を教える合間に、人生のお話しをお弟子さん達に、ユーモアを交えてされる。この人気が高い。だから女性にもてるんです。これが健康維持とボケ防止に最高に良いようだ。

 結果として、月に一回国立病院に検査に通われるが、血圧正常、目も正常、悪いところはないという。95歳まで運転免許も保証された。

 昭和2年4月生まれの先生は、2018年現在、92歳、現役である。東奔西走で走り回ってみえる。今までに240回、中国に行かれた。全て自費である。

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2018-05-26

久志能幾研究所 小田泰仙  e-mail :  yukio.oda.ii@go4.enjoy.ne.jp

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