確かに「そんな小さなこと」は黙っていた方が、波風が立たず、平穏無事に社会は流れていく。「あっしには関係ないことでござんす」と言えば済む話である。私も非難されず、傷つくこともない。「あの人はできた温厚な方だ」と褒め殺しをされ、なあなあで慕われた方が楽だし、平穏な老後が送れる。
「そんな小さなことは黙っていなはれ」という「悪魔のささやき」が耳元で聞こえる。人生はそれとの闘いである。その闘いは、己の魂の叫びと悪魔のささやきの闘いである。
松本明慶大仏師作 「魂(オニ)」
リーダーは嫌なこと(正しいこと)を指摘して、なんぼの世界である。そうしないと組織が崩壊する。黙っていれば、その病気は他のグループに伝染する。新型コロナのように。
蟻の穴から堤も崩れる。堤防が決壊するのは、小さな蟻の穴からだ。組織も自分も同じである。
前職の会社のモラル崩壊
40年前、職制会の宴会の後、ある課長が「どうせ会社の金だ。タクシーで次の店に行こう」と言って仲間とタクシーで二次会の場へ去って行った。
役員の経営がルーズになると、下の課長たちも金使いがルーズになる。それが原因のモラル崩壊の現実を目のあたりにした。
その30年後、会社はコンペチターに吸収合併され、市場からその名が消えた。当時の私の力では何ともならなかったが、その前兆はひしひしと感じていた。
私は自分の部下の範囲で、間違ったことを防ぐ抵抗を続けていた。だから部下の不正は見逃さなかった。そうしたら上司もそういう不正をやっていて、私は飛ばされた。宮仕えの厳しさである。会社では正論を通せば、それが正しい行動であるわけではない。なにせ社員には家族がある。黙っているしかない場合が多い。
会社の不正と崩壊
三菱自動車、三菱電機の不正でも同じである。
タカタでも、エアバック死亡事故の発生当初は、正論を言った社員は飛ばされた。タカタは米国でエアバッグのリコール問題を起こした原因で、その対応の失敗から倒産に至った。ささいな指摘を会社の社長が抹殺したのが原因である。
2021-09-26 久志能幾研究所通信 2161 小田泰仙
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