自分は明日、何の為に生きるのか、という勉強をやっておかないと、その時その時の調子もので一生を終わってしまう。調子に乗って、社長に祭り上げられ、市長に祭り上げられ、のぼせて経営をしても、後世に何も残せない。市制100周年記念行事の祭りや行事に没頭してウツツを抜かせば、何の意味もない人生を送ることになる。己の会社の社員や、大垣市民が不幸になるだけだ。それは人生の驕りである。100年の計を間違えている。
令和の理想
「令」の字に「口」を追加した象形文字が「命」である。その時代の元号は日本の理想である。「何事も秩序をもった美しさを持て」が「令和」の意味である。元号とは、これからの30年間の日本の目指す理想の指針である。それに己の人生に当てはめないと、人生が有意義にならない。
今までの日本の歴史では、「昭和」だけが理想通りにいかなかった。それは「口」という四角張った文字が3つも含まれていたことも原因だろう。それは馬場恵峰先生が書家だから気が付いたことだという。
令和20年の姿
皆さんが20年後、令和20年を迎えると、65歳以上の老人が3人に一人である世界である。その時に、どういう「もう一人の自分」を創ってきたかが、人生の生きざまを分ける。その時に何を残すかが問われる。
モノを残し、カネを残してもつまらない。人間として生まれ、素晴らしい人生であったという証しを残して、あの世に旅立ちたい。
命の根
涙堪えて悲しみに耐える時、
愚痴を言わず、苦しみに耐える時、
言いわけしないで、ただ批判に耐える時、
怒りを抑えて、ただ屈辱に耐える時、
あなたの命の根は深くなる。
相田みつを作詞 『にんげんだもの』詩「いのちの根」
自分自身がしっかりしていないと、自分の人生で行き詰まる。
人生の大事
馬場恵峰先生は、最初の妻が若くして亡くなられた。後継者と希望を託していた3男が40歳で、幼子を残して病死した。なんで俺だけがと先生は嘆かれたという。悲しみに耐えるしか手がなかった。
馬場恵峰先生は、中国に240回も行っていると、書道仲間から、陰でくそみそに誹謗された。その逆風に「なにクソ、みていろ、やってやるぞ」と粉骨奮闘でやっきた。上記の詩のような心境で頑張られて、今の先生がある。
私も前職で、教育関係で信念をもってやってきたことを、吸収合併された後、会社の教育方針が今までと真逆になり、嵌められて閑職に追いやられた。言い訳をしても、新会社では意味がないので黙って屈辱に耐えた。だから恵峰先生の心情がよくわかる。会社では世間で正しいことでも、上司や会社の価値観で正悪が逆転するのを体験した。
非難中傷や足を引っ張る人間は、己は表にでず、陰で非難、裏工作だけをして、足を引っ張るものだ。それが一番卑怯である。
それ以来、私は言い訳をしないことを人生方針とした。私の言動が理解出来ないレベルの人と向い合っても時間の無駄である。それに足を取られず、私の人生の大事を急ぐような人生設計とした。
もう一人の自分を創るには、
まず自分が変わろうという意欲を持たないと、何事も成就しない。それは会社経営でも教育でも同じである。
経営セミナーは経営理念の話ばかりで、人間としてどう生きていくべきかの話しが欠如している。だからそんな話ばかりを聞いても会社は儲かるようにはならない。
字を上手に書こうと思ってはダメ。書道で、人生を學ぶのだ。一道を極めれば、万事に通じる。
1 手を動かす
恵峰先生は現在93歳で現役である。人から、「なぜそんなに元気なのか」とよく問われるという。「自然から薬を頂いている」が先生の回答である。
日中文化資料館の庭には草一本生えていない。生えれば、草を取るからだ。毎日、体と手を動かして庭の草取りをする。それが自然から薬を頂いていること。
先生は、「知りたたることを、人に教えて、感謝されて」生きている。人のために生きる人を仏様は支援する。それが自然から薬を頂くこと。
一番頭によいことは、手を動かすこと。両手がしっかり動けば、長生きできる。だから恵峰先生は筆で書を書いている。そのことは釈尊の経典に書いてある。人は、両手を使って書けば覚えるのだ。目で読むから覚えない。だから老化が早い。
それを人差し指だけの一本だけで人を指さして、非難するだけに手を使うから早くボケて早く死ぬ。人を指すのでなく、指を丸めて、舌を丸めて、言いたいことをぐっと我慢することだ。その代わり、手で自分の心情を、手を動かし紙に書く。
お足を使う
人のやる企画・運営は簡単に崩れる。それは頭だけの仕事。しかし真心で作ったことは崩れない。真心で最善を尽くすことである。
人はうぬぼれると足を動かさなくなる。足とは「お足」である。お金を使わないから、智慧が付かない。だから定年後にすぐに老人ホームに直行である。
恵峰先生は、中国に240回以上も旅して約7,000万円を使った。その金は残っていないが、中国人との交流で中国の書家との愛情が残った。それが、「旅は道連れ世は情け」である。
心に鍵をかけない
「あれは好かん、これ好かん、それは無理」と言っていては、自分の新しい人生は作れない。やらないのは、それは自惚れである。自分が恥をかくことが怖ろしいのだ。だから人生で行き詰る。それは心に鍵をかけること。それを避けよ。心の戸を開くカギは、「そういう考えもあるだろう。教えてくれて、ありがとう」である。
2 忘れることの大切さ
愚痴をこぼさない。いつまでもくよくよしない。
前向きに考えることである。
3 相手の長所を見る。
短所ばかりを見る人を「馬鹿」という。短所は誰でも、よく良く見えるモノ。長所を見る能力を作れば、自然と短所は見えなくなる。短所ばかり見て、批判ばかりするから、うだつが上がらない
4 過去の経験を上手に使う。
失敗を振り返ること。過去の失敗を闇に葬らないこと。失敗の中に、人生のお宝が埋まっている。それが自分株式会社の企業経営の基本。
5 怒りをなくす
6 家庭で子孫に伝える
親子別生活を避ける。親子別生活が現代社会の一番の問題である。伝えるべき大事なことが伝わらない。現在の東京一極集中となると親子関係の危機である。聞いておかねばならないことが聞けなくなる。対話する機会が無くなる。家庭生活をどう受けついでいくか。それが現在の日本の問題。
だから恵峰先生は、家族に伝えるべきことを書いて置こうと決断した。先生はこの春に人生訓の掛け軸100本を完成させた。
人生で大切なことは、後世に何を残すかである。モノやカネを残しても、その人の魂の痕跡は残らない。モノやカネは虚しい遺産である。役人が美味しい思いをするだけだ。美田を残せば、子孫が堕落する。
それが今回、出版予定の馬場恵峰先生の人生訓の軸を写真集にまとめた『老いのともし火』である。
本内容は、2019年5月23日、馬場恵峰先生が仙台で講演をされた内容を参考にまとめました。
2020-01-05 久志能幾研究所通信 1445 小田泰仙
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