渡部昇一著『95歳へ!』 飛鳥新社 2007年 1200円
大事な箇所が多く、多くの付箋を貼った愛読書。
[要旨]
何事かをなす時間は、まだたっぷり残されている。60歳から35年間を設計する、中高年のための実践的幸福論。ボケずに健康で95歳を迎えるため、氏は何人もの矍鑠たる高齢者と対談し、教えていただいたノウハウを氏なりに租借して、この本にそのエッセンスとしてまとめた。
読書所感
本書では老後に焦点を当ててはいるが、世代を超えて人生観・生活の方法の見直しとして多くの示唆があり、私は熟読した。
渡部昇一師は、60歳の人に95歳を目指して、あと35年間、がんばろうと主張している。しかし個別の内容は、どの世代でも応用できる生き方のヒントや氏の人生観が多くあり、中年だけではなく、全ての世代に伝えるべき良く生きるためのエッセンスである。若い人ほど、人生の計画を立てる上で、早く読むことをお勧めする。
歳月は人の背後より迫り、無常にも追い抜いていく。誰にでも訪れる死。その死を受け入れ、死までの人生を充実して過ごす術を知ることは大事である。よく生きた人生は、よく働いた日と同じように、安らかな永遠の眠りにつながる。
95歳まで生きようと思わないと、70歳までも生きられないだろう。蒲柳の質で幼少のころは養護クラスに入れられた渡部師だが、80歳代でも幅広く活躍をされていた。95歳まで生きると言われた師は、残念だが2017年〈平成29年〉4月17日に心不全のため86歳で永眠された。95歳までは時間があったが、最後まで、現役で活躍された師は、『95歳へ!』の内容を実行されていた。
渡部昇一先生(当時84歳) 第24回山本七平賞授与式で・帝国ホテル
私はPHP研究所より招待されて出席した。 2015年11月24日
松下幸之助翁の場合
蒲柳の質の松下幸之助氏は、「20歳までも生きられない」と医者から言われた。しかし本人は「120歳まで生きるんだ」と周囲に言っていた。結果として94歳の天命を全うされた。凡人の我々が、95歳まで生きる目標・職務を見つける努力をするのも、安逸な生活を避ける方法である。
白川静氏の場合
この書で、白川静氏の生きかたを紹介されている。氏は88歳から94歳まで京都の市民大学講座で24回も講義をされている。それの収録DVDが発売されていることを知り、購入した。これを観ると生きる力が湧いてきる。
生きるための言語能力
また、生きるには言語能力の維持の必要性に気づかされ、音読を習慣にすることにした。今まで音読のよいことは理解していたが、よい教材がなく実行できてなかった。この書を読んで思いついたのが、今までに書抜きをした資料である。本一冊を音読すると間延びがして飽きがくるが、自分で選別した図書で、かつその中からの書き抜きなので、興味が持続する。また、何回も音読することで、内容が頭に刻み込まれる。今までは、本を読んでそのときは感銘しても、すぐに忘却の彼方の例が多くあった。なかなか何回も読めないが、抜書き資料なら意外と長続きする。『脳に悪い7つの習慣』の著者林成之教授も、大事なことは何回も頭に叩き込むべきとの説にも合っている。
本書との出合いの9年後
私は、この本には2010年に出会い、熟読してその後の人生の生き方のバイブルの一つにしてきた。しかし2019年初にガンが発見され、医師より余命2年と宣告された。それで当初の95歳まで生きる目標値が少しぼやけてきた。しかし生きていく姿勢は、当初のままである。余命2年とならないように、日々取り組みをしているが、この本はその糧として役立っている。
2019-05-10 久志能幾研究所通信 小田泰仙
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