仏師の彩色師が佛様の目を描くときは、彫られた目の頂点を探し、佛師が意図して彫った目の位置を探し出して目の位置決めをする。「どんぴしゃに目の位置が決まると、佛様がニコッとするのが分かる」と岩田明彩師はいう。それが目のスイートスポットである。目の位置が決まればあとは佛様と対話をしながら、佛様の表情にあう最適な目に仕上げていく。それが彩色師の仕事である。
決めどころ
テニスのラケットでボールを打つときも、ボールがテニスラケットのスウィートスポットに当たると、極めて気持ちがよい打撃感が手に伝わる。どんな仕事でも決め所がある。それがうまく決まると、仕事の醍醐味を味わえる。仕事が楽しくなる。仕事の魂と己の魂の邂逅である。そんな出逢いを得るには魂の修行が必要だ。真摯な仕事への取り組みがないと出逢えないご縁である。そんなときは、自分が仕事の鬼となっている。己が鬼にならなければ、仕事の新しい目は探せない。鬼とは己の魂の叫びである。
高野山納佛 増長天 松本明慶大仏師作、岩田明彩師目入れ(2014年)
高野山納佛 広目天 松本明慶大仏師作、岩田明彩師目入れ(2014年)
虚空蔵菩薩座像、桧 5寸 明慶先生作、岩田明彩師目入れ(2014年)
聖観音菩薩像、楠 1尺 明慶先生作、岩田明彩師目入れ(2011年)
2019-05-25 久志能幾研究所通信 小田泰仙
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