死望校を死計する

 大学という世界に行くときに志望校の選定があるように、あの世という世界に行くときは、死因となる病の学ぶ校舎を選ぶ行為があってしかるべきである。志望校に受かるには、それ相応の努力が必要であった。一生で一回だけのあの世の門をくぐる入試に、希望する「死病」になるには、然るべき努力は必要である。その準備をしないから、悲惨な死を迎える。己の死に方は、仏様が試す入死試験なのだ。

 

死とは生きること

 死に方(死計)を決めるとは、人生を最大に生きること。就活も婚活も終活も、必死にやらねば成果は得られない。まして一生で一回限りの死なのだ。構えなければ、野垂れ死にである。あらかじめ死計があれば、死に接しても逍遥として、死を迎えることが出来る。死計が明確であれば、余命宣告を受けても、慌てることはない。

 

万物すべて活き物(佐藤一斎著『言志録』242

(万物には活きた道理が存在しているから)万物は初めから活きた物である。だから世事も総て活物である。(その道理からすると)生は勿論のこと死も活物と言える。(久須本文雄訳)

 

理想の死は老衰

 理想の死に方は、老衰である。しかし老衰で死ねる人は1%しかいない狭き門なのだ。せめて死の1週間前までは現役で活動して、1週間ほど体調を崩して寝込み、死ぬのが理想である。

 スイスの法学者ヒルティは、朝、いつものように散歩をして、帰宅後、少し疲れたといってベッドに寝て、妹が温かいミルクを持ってきたら、亡くなっていた。心臓麻痺で77歳の死である。彼は前日の夜まで執筆活動をして、現役での死で、理想的な死である。彼が亡くなったのは1909年で、現在に換算すれば90歳近い年齢であった。

私は、認知症、心筋梗塞・脳梗塞、糖尿病では、絶対に死にたくない。そのために、私は死にもの狂い(?)の取り組みをしている。

 

認知症

 現在、日本の65歳以上の人の15%は認知症である。認知症は脳死である。自分が自分で無くなるという悲惨な死に方である。認知症になると、本人は何もわからないから良いが、その家族は悲惨である。

 警察署長や校長先生は、認知症になりやすいという。気ばかり使って、頭を使わず過ごしてきたからだ。一日中、痴呆的なテレビ番組を見て過ごせば、認知症になりやすいだろう。

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脳梗塞、心筋梗塞

 この病魔に襲われると、ほぼ即死状態である。死後の準備が何もできない。それだけは避けたい病気である。私はその防止で、4か月に一度、大垣市から久留米市の真島消化器クリニックに通院している。その真島院長の指導のお陰で、高血圧が改善し、この病気で倒れる危険性は減った。

 

糖尿病

 糖尿病にかかり失明でもすれば、私にはもう生きていく望みがない。目が見えない世界など想像できない。私は本を読み、書くことに生きがいを感じている。失明は致命傷である。

 糖尿病で人工透析に身になれば、1週間のうち3日の半日が、ベッドで透析を受けることになる。白い天井を見ながら半日を過ごす。命の時間が無為に過ぎていく。その費用も年間500万円という。保険がるので自己負担額はそんなに多くないが、多くの人の健康保険金を使うことになる。それが10年間も続く。国の財政を圧迫する罪である。

 

緩慢なる自殺という死計

 煙草を吸えば肺がんのリスクが上がるのは常識である。酒を飲めば、アルコールは肝臓でアセトアルデヒドに分解される。これは発癌性がある物質である。酒を飲み過ぎれば、肝臓がんや他のガンになる確率が増える。暴飲暴食をすれば、体の臓器に負担をかける。それが長年続けば、病気になるのは自然の摂理。

 世には人の健康は知ったことではない食品業界が跋扈している。止められない止まらないと、人の食欲を煽る嗜好品が氾濫している。人工甘味料、添加物、合成調味料を食べ続ければ、病気にならないのが不自然である。その嗜好品の誘惑に負けると、自分の死計が狂ってしまう。

 例えば、格安牛乳なら、狭い牛舎で密集して育てられ、病気予防で抗生物質、成長ホルモン入りの餌で、強制妊娠として女性ホルモンが多量に出た牛から、搾乳された牛乳が出回っている。その牛乳には抗生物質、成長ホルモン、女性ホルモンが含まれている。それがガンを誘発する原因となる。だから日本人にガンが増加している。他の食品も、人の健康は度外視して、効率化、金儲けのためだけに生産される。それが体にいいわけがない。

 

危機管理

人間の体は自転車操業である。歩くの止めれば倒れてしまう。適度な運動が病気を防いでくれる。

定期検診をさぼれば、病気が進行し、手遅れとなる恐れがある。どれだけ注意をしても、病気は避けられない。せめて早期発見、早期治療が緩慢なる自殺を防ぐ手段である。

 病気に対する知識を学ぶことが、緩慢なる自殺を防ぐことになる。それは危機管理としての死計である。自分の城は自分で守れ。トヨタの鉄則である。

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馬場恵峰書『佐藤一斎著「言志四録」51選訓集』(久志能幾研究所刊)より

 

2019-02-25  久志能幾研究所 小田泰仙

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