2018年12月19日、馬場恵峰書『金子みすゞ 詩の世界55恵峰選集』(小田泰仙編 久志能幾研究所刊)を出版しました。全60頁、A4版横、価格2600円。
下記は馬場恵峰師の巻頭言と後書きです。本書では毛筆での記述ですが、このブログではテキストに落としました。原本は10mの巻物です。
購入を希望される方は、メールにて小田まで申し込みください。発行部数が少ない為、一般書店には回せませんので、ネットでの直販です。
巻頭言
金子みすゞは、昭和5年3月9日、3通の遺書を残して、睡眠薬を飲んで、10日、26歳の短い生涯を閉じた。私(恵峰)にとって考える時、(母は)36歳で弟(毅)を生んで2日後に亡くなった。その事と重ねて見て、私が3歳の時の出来事で、みすゞは「今夜の月のように私の心も静かです」の遺書を残している。
生誕100年記念に出版の本の中から「人と人」、「人と自然」、「人と宇宙」等、金子みすゞの詩を選55首、此の巻物に走り書きした。
昭和初期に(昭和2年4月生まれの私)、みすゞは消えた幻の童謡詩人。私たちの心にみすゞの詩が、今もこだまのように筆を走らせる度に私の心に響いてならなかった。
「大漁」で、朝焼小焼だ、大漁だ、大羽鰮の大漁だ、浜は祭りのようだけど、海の中では、何万の鰮(いわし)の弔いするだろう」と言う詩がある。人の一生、人生の中で、生老病死、所行無常、生活のあらゆる場面で、多くの心の色どりに向い合い、「怒喜愛楽」で人事ではない。自己の人生の歩みの中で、チョット立ち止まって、此の詞文の心を味わい感じて見たらどうだろう。平成の終わらんとする今、静かに回想してみては。
童謡は大正の初めから昭和の初めにかけて、錚々たる詩人、歌人達、さまざまな試みをなして大きなうねりを見せる。「創作童謡」は子供から大人まで幅広く熱い讀者をファンに得て、わが国の近代詩史にあっても類を見ない輝く詩歌の黄金時代を形成する。大正期の理想自由教育の流れと共に、明治期の文部省唱歌に対置する新しい子供の歌として、芸術性の香りを放つ童謡が、教育の現場にあっても急速に広まって行った。
が、私の人生で軍国主義時代に入り、歌そのものも厳しく制限、限定され、軍歌なるもの流行、柔軟な心の表現、統制厳しく制限された。
戦後は想像を絶する歌と踊りの世界が展開されている現代、みすゞの詩情等、全く今時ナンセンスかも知れないが、人の活きる日々、お互いが自からの人間の心の動きに反省と勇気、己を大切に延命長寿念じたい。
此の巻物に想いを込めて書き残して
金子みすゞの詩は私の人生、一生の中で、時、所は異なれど、今92翁の身で筆り、自分の人生の歩みに少なからず相似たる思いあり。こうして一巻に代表的な詩まとめて見た。相似るとは、私の母は昭和2年私を生み、3歳の時、他界した。母の顔知らず。3歳の時、みすゞは36歳で死んでいる。私の人生、ここに書いたみすゞの詩の心が、童心の私の昔のいろいろの事につながって、今こうして執筆活動書道の歩みが、母、祖父等々の血脈の中で活き続いていることは私だけの魂の世界ここに述べられた。それぞれの詩文の中に働いているような気がしてならない・・・・こうした己の主観がついつい此巻物にこうした筆跡となったと思う。
2018年3月16日 恵峰
2018-12-18 久志能幾研究所 小田泰仙
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