2011年4月6日、第50回京都佛像彫刻展に出かけたら、偶然、大仏師松本明慶さんにお会いできた。師から展示されている佛像の説明をしていただき、興味深いお話をうかがった。
そこには多くの若い仏師の作品が展示されていた。中には松本工房から独立して、佛像を作っている仏師の作品も展示されていた。素人目から見て、松本工房の仏師の作品に比べて、独立した仏師の出来が落ちるのである。明慶師によると、独立したくらいだから腕はいいのだが、独立当時から、作品のレベルが変わっていないという。つまり、時間が止まっている。
これは、自分の世界に閉じこもってしまい、松本工房で大勢の仲間との切磋琢磨がなくなったので、成長が出来なくなったとのことであった。自分の世界と比較して、身につまされる事象である。人は、批判、指導により人間として成長し、その作品の出来に影響するのだと。作品とは、その人自身を表す。
「学」の旧字は「學」で、冠は皆と喧々諤々の議論を戦わせている様を表す象形文字である。一人では学べないのだ。
2018-12-21 久志能幾研究所 小田泰仙
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