自動車において最大の無駄遣いとは、交通事故への出費である。これを抑えられれば最大の節約になる。車の運転を、人生における仕事の一部として認識して、真剣に取り組めば事故も減る。なにせ下手にミスると、人生を棒に振る。
間違いを減らす心がけ
「人間は間違いをする葦である。かつ後から考える(後悔する?)葦でもある。」その人間が運転をする場合、その間違いは交通事故に直結する。だから間違いを一つしても、そのミスをリカバーできる余裕ある運転が、事故になる確率を減らしてくれる。
下記にその具体策を記述する。これを実行しても事故は0にはならないが、確率的に事故になる要因を各々小さくしていけば、理論的には限りなく事故は0に近づく。13年間に一度と計算される交通事故確率を1/10にすれば、130 年間は事故に遭遇しない。万に一度と計算される(13年に一度)起こす事故の確率を、無事故の人の事故確率に相当する 1/5に減らすとすると、26,000円/年の節約となる。
(430,000 円÷ 13 年)-(430,000円 ÷ 13 年÷ 5)=26,000円/年
年間26,000円を稼ぐ仕事をするつもりで、下記の安全対策に取り組むのが、人生VAである。ただし、このノウハウは、あくまで基本的な安全運転常識がある前提で、シートベルト未装着や飲酒等をする輩には適用できない。カーメーカのテストドライバー運転資格取得で指導される内容や、私の経験、読んだ書籍等から、安全に関する事項を中心に記述する。
運転とは考える労働
事故が自分の年収や人生設計にマイナスという影響を及ぼす以上は、運転は仕事と見なすべきだ。だから、事故というマイナスのVAを出さないために、運転時の頭脳労働が欠かせない。カーメーカのテストドライバー運転資格の技量や運転技術向上には「頭を使った運転」と「習うより慣れろ」の2つが必要であるが、普通のドライバーには、頭を使った安全運転で十分で、それが事故を減らしてくれる。
「運転は考えて行うもの。いつも考えながら運転することが安全につながる。」 徳大寺有恒
◆ 事故の確率
死亡事故を起こす確率は、宝くじの1等が当たる確率よりやや小さい。全国の平均死亡事故率は、1億キロ当たりで約2件である。一回当たりの平均的走行距離を仮に15kmとすると、死亡事故を起こす確率は下記計算で 1,000万回に3件となる。
2件 ÷( 1億km ÷ 15km ) = 30件/1億回
宝くじの1等の本数は、1000万本に4本と言われており、その確率は1,000万回に4回。これに対して人身事故、物損事故を起こす確率は、1万回に一度(万が一)と推定される。一日15 kmの距離を往復で2回乗るとすると、13年に1度の確率となる。つまり、確率・統計上で13年に一度の頻度で43万円の出費を強いられる。だからその起こる確率を減らす対策が、この事故を減らし、人生ロスを減らし、車の経費の節約に通じる。データは古いが、保険会社の統計データから、事故の損害額が下記に示される。
表8.1 事故別保険金支払い額
事 故 内 容 保険金支払い概算(1990年度)
死亡事故( 11,000件) 約3,500 億円( 3,180万円/件)
人身事故( 890,000件) 約8,500 億円( 96万円/件)
物損事故(約 2,000,000件) 約8,600 億円( 43万円/件)
◆ 事故の「定石」を覚えよ
どんな勝負事にも「定石」が存在する。人生の生存競争をかけた自動車競争で、事故になるのは、起こるべくして起こった「定石の事故」が多い。その定石パタンを認識するだけでも、事故は減らせるもの。囲碁は勝つため定石を覚えるのだが、交通戦争は、負の遺産を背負い込まないためと、人生の生存競争に負けないため、事故の定石を覚えたい。そうすれば、車両保険に入らなくてよい。それで私は40年で、155万円を節約した。その定石の事故内容は、林洋著『自動車事故の科学』(大河出版 1994年刊)に詳しい。
◆ ヒヤリ事例に注意
基本的には、ヒャッとした事象が、事故になる「定石」である。ヒャッとしたミスが数百回続くと、そのうち、たまたま間が悪い時に、それが事故に「昇華」する。だから、「ヒャッとした経験」を無くす運転が事故を少なくする。それは産業の事故を分析したハインリッヒの法則そのものである。
昔の職場では、室員全員の持ち回りで、ヒヤリ事例をノートに記して回覧していた。そのノートには、起こった状況、反省(どうすれば防げたか)、対策と安全コールを記して週末のミーティングで紹介しあい、具体的な方策系の安全コールで唱和していた。自動車産業に従事する人間には、自動車事故を起こすのは犯罪なのです。
◆ 事故の責任割合
交通事故の原因は、一方に100%の責任があることはない。事故のあった双方に責任がある。そう理解しないと、事故は無くせない。止まっている自分の車に相手が突っ込んでくるのも、相手が信号無視するのも、郵便ポストが赤いのも、それで事故になれば、「それを予想しなかった自分が悪い」、「そんな場所を、そんな時間帯に、自分がその場所を走ったのが悪い」、「そんな悪運を背負い込む自分が悪い」と思うべきだ。その上で、事故防止としての自分の行動を考えるべきである。そうすれば確実に、事故に遇う確率と被害額は減る。
2018-06-12
久志能幾研究所 小田泰仙 HP: https://yukioodaii.wixsite.com/mysite
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